平家物語、悲劇の女性三選!小宰相の局、千手前、横笛
平家物語は武将の活躍が実に華やかですが、女性陣の活躍も実は見どころですよね。
ここでは、平家物語に登場する多くの女性の中でも、若くて、美人で、悲恋の女性三名を選んでまとめました!あんまり有名どころじゃないですが、ぜひ彼女たちのエピソードに涙してください!
夫を追って身投げ!小宰相の局
小宰相の局は平通盛(みちもり)の妻で、一の谷の戦の後、夫の死を悲しんで身投げした人です。大変な美女で恋愛結婚。これでもかってくらい悲劇のヒロイン。ぜひともドラマで見たいな~。
平通盛、小宰相の局に熱烈アタック!
小宰相の局は、もともと宮中にお仕えする女性で、今で言えば大変なキャリアウーマンでスーパーエリート、「デキる女」です!しかもですね、この頃ですから「顔も最高」じゃなきゃ、宮中で雇ってもらえません!
この小宰相の局に一目で撃沈したのが平通盛。必死にまとわりついてクドクドと口説き言葉を繰り返す通盛でしたが、小宰相の局はなかなかガードが堅いです。全然相手にしてくれません。
というのも、平家は貴族じゃなくって武士の家系。それも、成り上がり一族ですから、スーパーエリートの小宰相の局から見れば、
「成金のお坊ちゃんで親の七光りじゃない。相手にしてらんないわ」
って感じです。
が、通盛は諦めません!恋文一通受け取ってもらえない彼、ついに彼女の牛車をダーッと追いかけ、テイッと恋文を牛車の隙間にぶん投げ、見事にナイスショット!……この涙ぐましい努力には、さしもの小宰相の局もヨロヨロッときて、彼の全身全霊の恋を受け入れたのでした。
通盛死亡……。一人ぼっちに
さて!平家は源氏に追い詰められ、ついに一大決戦、一の谷!
一の谷の海岸で、平家と源氏は衝突します!ですが……スーパーヒーロー義経(よしつね)の活躍で、平家はボロ負け。この時、通盛は殺されてしまったのです……。
生き残った平家の人々は、急いで船で逃げていきます。瀬戸内海を西へ……西へ……。その中に、小宰相の局もいたのです。
夫の後を追って……
ひたすら海を漂う平家の船。小宰相の局は「通盛さまは戦死なさいました」と聞いていましたが、にわかには信じられません。彼女はこの時、通盛の初めての子供を身ごもっていました。通盛もその誕生を大喜びで待っていた矢先だったのです。
「きっと帰ってくる……」
と待ち続ける小宰相の局。ですが、平家に届くのは絶望的な知らせばかり。「諦めて下さい、奥様。通盛さまは、もう……」と召使たちも口々に……。
そんなある晩、船の兵たちが大声で騒ぎました。
「あれは何だ!何か白いものが」「波の間に、誰か浮かんでいる!」
引き上げてみると、それは波間に身を投げた小宰相の局だったのです。彼女は、この時まだ二十歳。夫は帰らない……。その上、平家の滅亡は明らか。この上は子供と共に夫の元へ行こうと覚悟を決めたのでした。
死罪を待つ貴公子と恋に落ちた千手前(せんじゅのまえ)
千手前(せんじゅのまえ)。「大輪の牡丹の花」とまで称された平家の美貌の貴公子、平重衡(しげひら)と恋に落ちた白拍子です。
死刑確定の貴公子、平重衡
平家と源氏の一大決戦、一の谷!この戦いで生け捕りとなった平家の大将に、平重衡(しげひら)がいました。
この重衡、「大輪の牡丹の花」とまで呼ばれ、宮中では無数の女房達が彼のファンになったというくらいの超絶美男子。しかも、武将としての才覚も素晴らしく、平家の中でも堂々トップの大将だったという、五つ星貴公子だったのです。
さて、この重衡、源氏の捕虜となって鎌倉へ護送されます。重衡は立派な大将なので、捕虜とはいえ客分扱い。源義朝(よりとも)も、彼を「手厚くもてなせ」と、家臣の館に預けることにしました。
重衡と千手、運命の出会い……
さて、家臣の館に身柄を預けられた重衡、その晩酒宴が開かれました。その場に、舞姫として呼ばれたのが千手前(せんじゅのまえ)。男装の白拍子(しらびょうし)です。
千手は重衡を一目見るなり恋に落ち、情熱的に歌います。
「よろずの仏の願よりも 千手のちかひぞ 頼もしき」(どんな仏様の願いよりも、千手観音の誓いこそ心強く思って下さい)
自らの名前を、千手観音にかけて歌ったのです。この歌に激しく心を動かされた重衡、とっさに琵琶を取って歌いました。
「ともしび暗うしては 数行虞氏(ぐし)が涙」
昔の中国の英雄と、その恋人虞美人(ぐびじん)の歌です。「昔、中国で滅ぼされた英雄が、最後に恋人を思って泣いたように、わたしもお前を恋しく思っている」という、そういう意味ですね。
重衡は捕虜ですから、すぐにも殺されてしまう身の上。その運命を知ってさえ、二人は運命的な恋に陥ってしまったのです。
その晩、春の短夜を嘆きつつ、二人はたった一夜結ばれたのでした。
首を斬られた重衡。病んで死んだ千手
重衡はその後奈良へ護送され、首を切られてさらされてしまいます。
千手は重衡を忘れることができず、ひたすら思っているうちに、ついに病気になってしまいます。日に日に衰えていく千手を、さすがの頼朝も哀れに思い、彼女を妻の北条政子の侍女にしてやります。これは当時とすれば信じられないくらいの大出世なのですが……恋人を失った千手に、出世など何の意味があるでしょう。
ついに三年後、千手は病死してしまったのでした。
このお話、この漫画に載ってます。ちょっと内容は違いますが、と~ってもドラマチックでいいですよ!
恋人に捨てられた横笛
このお話は平家物語に登場する「瀧口入道の若かりし頃」というストーリーで紹介されています。高僧、滝口入道がどうして出家することになったか?それには、若かりし頃の悲恋が関わってるんだよ~、というエピソードです。
身分ちがいの恋……強制的に離別
横笛の恋は最初っから絶望的です。相手の男性は斎藤時頼(ときより)、身分高い北面の武士。平重盛にお仕えしてました。横笛は一介の白拍子(雑仕の娘とも)に過ぎません。
ある日時頼は舞を舞う横笛の姿に、一目で恋に落ち、逢瀬を重ねるようになります。しかし、これを時頼のお父さんがいい顔するはずがありません。
「あんな白拍子とは別れろ。お前には素晴らしい縁談があるのだ!平重盛(しげもり)殿が、イイとこのお嬢さんを紹介してくださったんだぞ!」
時頼大ショック。「イヤです」と一蹴。「何!何が気にくわないんだ!」と口論になりますが、「そんなブサイクな娘はヤダ!」と、一目もそのお嬢さんを見てないのに、なぜかブサイクと決めつけて大ゲンカ。
……これに困ったのは斎藤お父さん。何しろ、お仕えしてる重盛からの紹介。断ったら生活にかかわるかも。「もう横笛を追い出して、バカ息子に諦めさせるしか……」と考え、横笛を追っ払ってしまいます。
これにブチ切れたのが時頼。
「人間、いつ死ぬか分かんないのに、最愛の女と一緒になれなくって、短い人生をサイアクな女と暮らさなきゃならないなんて耐えられない!もう出家する!」
と、何と出家して「滝口入道」となってしまったのでした。この時、時頼はまだ十八歳だったというから驚きです。
恋人に会いに行った横笛。でも追い出される
さて、時頼は出家してしまったわけですが、横笛はこれで諦められるはずありません。
「せめて一目だけでも会ってください」
と、泣きの涙でお寺(嵯峨野)に行きます。ところが!何と時頼、
「そんな男はいないと言ってください」
と拒否!時頼は出家してしまったので、完全に女色を断って、仏道に専念しようと心に決めていたのです。
ですが、横笛にとってみれば青天の霹靂。追い出されたあげく、恋人が「そんな女には会わない」といきなり拒絶。何で自分が拒否されるのか、全然分かりません。おいおいと泣いて
「どうして心変わりしたんですか!せめて一目会ってほしいだけなのに……」
と涙の訴え。
すると時頼、さらにひどい拒否。なんと女人禁制の高野山にトンズラ!横笛が絶対に近づけないように山にこもってしまったのです!
ついに鳥になっちゃった横笛
あわれ横笛、恋人に捨てられて、
「ああ恨めしい。でもどうしても思い切ることができない。せめて、あの人と同じ仏門に入ろう」
と健気な決意。尼さんになってしまいます。
ですが、時頼を忘れることはどうしてもできず、ついに病気に……。数年後、横笛は死んでしまったのでした。
死んでしまった横笛はウグイスになり、高野山へ飛んでいきます。そして時頼の部屋の近くでピヨピヨと鳴き、また飛んでいったのでした。(この写真はメジロですが……)
まとめ
長々とお疲れ様です。
平家物語の女性エピソード、三つまとめました。どの女性も可哀想ですが、横笛は悲惨すぎますね。
この横笛、月岡芳年(ほうねん)の絵で素晴らしい傑作があるので、興味ある方は見てね。
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