【平家物語】平家の重要キャラ大解説!これで平家物語が読める!

2022年5月21日

平家物語の何がムカつくかって、平家の人たちが「全員同じ名前なんじゃないの?!」ってくらい似てる名前ばっかりなんですよね。清盛、重盛、敦盛、維盛……もう収集付きません。初めて平家物語読んだ人は、

「源氏の武将しか名前覚えてない……」

という悲劇に!平家物語って、平家の物語なのに!

なので!見分けがつくように解説します。「こいつらさえ押さえておけば、平家物語は読める!」という重要キャラだけに絞って紹介します。

平家で知っておくべきキャラ

平家で知っておくべき人物は、この赤で囲ってある人物。全部で9人です。でも、もっとさらに減らすなら……

 

 

黒で囲ったこの5人!どうです?ぐっと減ったでしょ?では、以下、この5名を順番に解説しましょう。

平家のドン、平清盛

平家物語前半の主役と言っても差し支えありません。何しろ、平家を日本一金持ち一族にしたのはこの人!何と平家は当時の日本の約半分(日本は66の国に分かれていましたが、このうち30が平家のものでした)をもっていたのです。歴史上ここまで金持ち一族になったのは、平家の他にありません!

平清盛(きよもり)は、たった一代で平家をこんな金持ちにしたんですから、まさしく大天才ですね~。

ですが!清盛は平家物語の中では超悪役として出てきます。と言うのも、清盛は天才ですが、何かと世の中を騒がせるし、「一族のことしか考えない」人だったからで……。他人の迷惑は知ったこっちゃないってタイプですね(史実じゃありませんよ?平家物語の中ではの話)。

では、清盛の悪行をここでは2つ紹介。

法皇幽閉!大勢島流し!

平家物語前半の大見せ場って感じのシーンです。

平家があんまり力を持ちすぎたし、「この世の中は平家のものだ!」って顔で威張りくさってるので、完全にキレた公家や法皇(後白河法皇)たち。

「クーデターを起こして、平家をぶっ潰そうぜ!」

と秘かに話し合い。……でもバレます。

これに清盛大激怒!

「ええい、許しておけぬわ!目にもの見せてくれる。者ども、戦の用意じゃ!」

一瞬で戦の準備。一夜のうちに公家たちは全員逮捕。さすが、やること早いです!しかも清盛、法皇にも容赦はしません!

「もう法皇への奉公はやめじゃ!誰が忠義を尽くすものか。こたびのことは奴が黒幕!法皇を処置せぬことには、解決せん!」

と、何と法皇の御所へ押し寄せようとしました!まあ、この時は清盛の長男、重盛が「それはさすがにヤバいんじゃ……」と押し留めたので未遂でしたが。でも、武士の身分で神サマにも等しい法皇に戦を仕掛けようとしたのは、日本中ドン引きの大犯罪だったのでした。

京都バイバイ。福原に遷都!

実は清盛、京都を完全放棄して遷都したことがあります!

行先は福原。今の神戸市です。この時の福原は完全ド田舎、人の住むような場所じゃなかったそうです。ですから、今の神戸市の始まりは平清盛のおかげなんですよ!

ですが……当時の大混乱は大変なものでした。

「ええ!京都を捨てるの?何で!」

っていう感じ。当たり前ですよね~。京都から福原に遷都っていうと、天皇の御所も全部お引越し。公家たちも全員お引越し。分かりやすく言えばですね、皇居と国会議事堂と官庁と国家公務員全員、他の県にお引越しって感じですかね?(しかも自費)大変すぎでしょ?

清盛がこんな大変なことをしたのは、清盛の最大の夢は、お隣中国と大交易を開こうということだったそうです。それには京都よりも福原の方が港を作るのにちょうどよかったわけです。それに、平家がもっと権力を握るために、福原に天皇を閉じこめて独占しよう……という悪だくみもあったからでして。

でも、これにより日本中大パニック!もちろん、この遷都は長くは続きませんでした。福原はぶっちゃけ、の原が青々と続いてるだけの田舎。大勢の公家たちは住む家もありません。御所も整わない有様。しばらくして、また都は京都に戻ったのです。

さて、こんな感じで、あれこれと世の中を騒がせた清盛。平家物語では完全悪人扱い。死に様も凄まじいです。もの凄い高熱を出して「あた、あた(熱い、熱い)」と叫びながら、七転八倒の末に死ぬという……。「こんな悪い奴だから天罰を受けたぜ!」って感じで書かれているんです。……天才なんですが、これはお気の毒ですね。

超早死に、平重盛

さて、今度は清盛の長男、重盛(しげもり)です。清盛のところでもちょこっと登場したこの人。平家物語の扱いでは、「とってもいい人!性格も顔も完璧!マジ聖人」というスペシャルな褒め言葉。

この人は史実でもホントにイイ人だったみたいです。顔も良くって(当時の価値観で)、真面目で頭良くって、天皇や法皇に対しても忠義厚い。武士の鑑!って感じです。清盛が後白河法皇に対して

「絶対許さない!法皇と言えども容赦せんぞ!目にもの見せてやる!」

と吠えまくって戦を仕掛けようとしたとき、「父上、おやめください!」と言って止めたのもこの人です。清盛はけっこうキレキャラで、よく「殺してしまえ!」とか「戦の準備じゃ!」とか言うんですが、重盛はそのたびに「お待ちくだされ!」と大説得。レる清盛」、「止める重盛」がお決まりパターンなのです。

でも、この重盛、平家の跡継ぎのはずだったのですが……惜しいことに超早死に。清盛がまだ元気なうちに、突然ポックリ死んでしまうのです。清盛はこれに大ショック。メチャクチャ泣きました。さすがの天下人清盛も、子供に先立たれる不幸は逃れられなかったのですね……。

不思議の人?重盛

重盛はイイ人であると同時に、「怪奇現象の人でもあります。

平家があんまりおごり高ぶって、「平家にあらずんば人にあらず」なんて失言しまくりなので、一人秘かに心を痛めていた重盛……。この重盛は、平家の中で唯一「このままじゃ我が一門は危うい……。いつかツケが回って、一門全員滅びちゃうかも」と思っていた人です。

それで重盛、ある時神社に籠って

「一族がひどい目にあいませんように。どうしてもひどい目にあうなら、わたしの命を奪って、一族を助けて下さい」

と泣かせるお祈り。と、その最中!なんと重盛の全身からピカッと青い光が!まるでホタルかイカのよーな発光。あまりにSFなお話なのですが……。平家物語ではマジメに書いてあるので、「そーゆーありがたいお話なんだ」と思って下さいね。

ともあれ、重盛はお祈りの通りに死んじゃったのです。一門の罰を受けて、自分が犠牲になって死ぬんだ!と思って死んだ重盛なのですが、平家一門はその数年後に全滅。ひどい神様もあったもんです。

最強の男、平教経

さて、この人。平家一門の中ではトップクラスに人気キャラ。

と言うのもですね、教経(のりつね)は平家の「最強の武将」なんです!源氏の最強キャラはご存知、義経(よしつね)ですが、教経はこの義経のライバル。屋島の戦いでもバトルしたし、クライマックスの壇ノ浦では

「判官(はんがん。義経のことだよ)!オレと戦え!」

と一騎打ちを挑みます!(義経はトンズラしましたが)

平家が源氏に散々負けて都落ちした時も、四国で戦いまくって平家の領土を確保したのもこの人。まさに平家の花形。あなたがドラマとかで平家を見た時、「こいつらの中で一番強くて二枚目が教経!」と判断して結構です!

教経大号泣!最愛の菊王丸死亡

この頃よくあったお話ですが、教経には最愛の小姓がいました。その名も菊王丸(きくおうまる)。(この少年、BLファンには有名らしいですね?)名前からして美しいこの少年に教経はメロメロ。とっても幸せな関係だったのですが……美人薄命のことわざ通り、この少年は早死にしてしまいます!

屋島の戦いで、熾烈な戦いをしていた教経と義経。弓の名手、教経は義経に向かって矢を放ちました。が、この時、義経をかばった部下がグサッと、その矢を受けて死んでしまいます。

菊王丸少年は、その倒れた部下の首を取ろうとして飛び出したのですが……この時に彼は「首を取らせまい」と太刀振りかぶった源氏の兵に殺されてしまったのでした。

「ああッ! 菊王丸……。こんなところで死んでしまうとは……」

恋人を失った教経は大号泣。あまりに辛かったので、この戦いはお開きになったそうです。(義経も部下に死なれて号泣してたので)

教経無念……。義経がトンズラ

平家物語のクライマックス、壇ノ浦の戦いです!平家はどんどん源氏に攻め立てられ、ついに全滅の憂き目に……。

そんな中、教経一人はバッサバッサと源氏の兵を斬りまくり、最後まで戦っていました。しかし、どこまでも強気の教経。

「こんな雑魚を何人も殺したところで仕方がない!ええい、義経!いざ勝負せよ!」

義経に勝負を挑み、躍りかかります!しかし義経は……

「うわ~、教経ってすごく強いんだよな。オレってチビだし、力もないから一騎討じゃ勝ち目がないよ」

と瞬時に判断。船から船へ飛び移って逃げ回ります!これが歴史上有名な八艘(はっそう)飛び!八艘飛びって言うとカッコいいですがね、ハッキリ言って命がけで逃げ回ってただけです。

で、義経にトンズラされた教経。

「今はこれまで……」

と入水自殺。泣き泣き死んじゃったのでした。

腰抜け過ぎ、平宗盛

この人は、清盛亡き後、平家のリーダーになった人です。

ホントは長男の重盛がリーダーになるはずだったんですけど、重盛がポックリ死亡。これで宗盛(むねもり)にお鉢が回ってきたわけなのです。

ところが!この人、リーダーになるにはムチャクチャ気弱。優柔不断で何にも決められなくって、戦争には全然向いてないタイプです。宗盛があんまりオタオタしているので、弟たちはムカムカ……。このせいで平家はズタボロになっていくんです。

弟ブチ切れ!裏切り者を見逃した宗盛

壇ノ浦の戦い直前のことです。

宗盛の弟、知盛(とももり)が宗盛のところへやって来て

「兄上、阿波民部重能(あわのみんぶしげよし)は心変わりをして、我らを裏切ろうとしています。やつのせがれが、源氏についたからです。裏切られる前に、奴の首をはねましょう」

こう進言するのですが、宗盛は全然聞きません。

「ちょっと様子がおかしいだけで、首をはねることはないじゃないか。やめようよ」

と、せっかくの知盛の提案を却下!知盛は「いや、ダメです!裏切られますよ!」と、最後まで言い張ったのですが、結局宗盛は聞きませんでした。それで、最終的に戦いの真っ最中で重能は平家を裏切り、そのために平家は大打撃をこうむったのです。

臆病者が大将になると命取りってことですね。

部下までブチ切れ!未練がましい宗盛

とうとう、壇ノ浦で大敗した平家……。平家の公達たちは、次々に海に身投げしていきます!鎧(よろい)を重ね着して体を重くしたり、重たいものを抱えたりして、二度と浮かばないようにしてダイブ……。

「宗盛様!今はこれまでです!」

部下たちは総大将の宗盛に、それとなく自害を促すのですが……宗盛は「死にたくないよ~」とあっちへオロオロ、こっちにオロオロ。全然飛び込もうとしません。ここに至って、ついに部下たちもキレます。

「えいッ」と後ろから海へ突き落し、宗盛は「ワアッ」と真っ逆さま……。

ところが沈みません!当たり前です。鎧を重ね着してないので、身体が軽いんです。しかも水泳が得意ですからバシャバシャと泳ぎまくり……。

そこにやってきたのが源氏の船。何と宗盛、「助けてくれ~」と源氏の船に乗り込んでしまいました!総大将のくせに、源氏の捕虜になっちゃったんです!

「ええい、何という恥さらしだ!あんな総大将だから平家は負けたんだ!」

部下たち、ガチギレ。口々に宗盛を罵ったのでした。当たり前です……。

泣かせキャラ、平知盛

情けない宗盛(むねもり)の弟、知盛(とももり)。この二人は「ダメな兄貴、イイ弟」の典型!宗盛はひたすらダメ男ですが、知盛はとにかく賢くて先が見えてて、最後まで平家一門を守ろうとする泣かせキャラ。

宗盛が「え~、どうしよう……」とぐちぐち言って迷ってる時、「兄上!迷っている場合ではありませぬぞ!」と、横からサポート。でも、大概無視されるんですが……。まあ、知盛は最後まで平家を心配してたけど、どうにもならなくって滅びちゃったんです!

兄貴から完全無視された知盛!そのせいで平家滅亡

平家物語のラストの大戦、壇ノ浦の戦い!その戦い直前、阿波民部重能(あわのみんぶしげよし)が平家を裏切ろうとしていることに気付いた知盛。

「兄上!(兄上の宗盛が総大将)奴は平家を裏切ろうとしてますぞ。今のうちに首を斬らねば」

まったくその通りだったのに、宗盛はそれを即却下。

「今まで尽くしてくれてたじゃないか……裏切るはずないよ」

「いや、ダメです!取り返しのつかないことになりますよ!」

「じゃあ、今呼んで様子を見るからさ~」

そこで、阿波民部重能を呼んだ宗盛。世間話をして様子をうかがいます。知盛はその間、ひたすら兄貴に目配せしたり、刀のつばをパチパチさせて「首を斬ろうぜ」アピール。なのに!宗盛は全部無視して重能を逃がしちゃったのでした。

その後、重義が裏切って、平家が大ピンチになったのは教科書の通りです……。

最後に掃除した知盛

壇ノ浦の戦いで、ついに源氏に追い詰められた平家!知盛は船の奥に身を潜めている母上(時子)はじめ女君達に挨拶に行きます。

「皆様には、お覚悟のほどを……。今のうちに、見苦しいものはすべて海にお捨てなさいませ」

言って、自らホウキを持って船内の掃除をします。その姿を見て、「ああ、もう終わりだ!」と女君達はいっせいに泣いたのでした。うう……、この場面でみんな泣いてください!

乳兄弟と一緒に身投げした知盛

この場面は、平家物語全編を通して、特に名高いシーン!よ~く目を開けて読んでくださいよ!

壇ノ浦の戦いで、平家の公達が次々に身投げしていくのを、じっと見ていた知盛。やがて、彼は静かに乳兄弟の家長(いえなが)に言います。

「もはや、見るべきものはすべて見た。あとは自害せん。家長よ、約束を(死ぬ時は一所に死のうと言い合っていた約束)覚えているか」

「はい、言うまでもありません」

おお……カッコいいです!男の友情ですね!

「用意をしてくれ……」

知盛が言うと、家長は何も言わず、鎧を二領持ってきます。主人も自分も、すでに一領着ているので、その上から重ね着するのです。

着終わると、二人とも何も言わず手を取り合い、じいっと互いの顔を見つつ、一気に海へ飛び込みました。

二人が飛び込んだ後、家来の一人がサッと駆け寄って来て、弓をギリギリと引き絞りながら、海面をじいっと見つめます。二人が沈んだ後、ブクブクと泡が浮かんでいましたが、やがてそれが途絶えます。

この家来は「もし、自分たちが見苦しく浮かんでくることがあったら、迷わず射殺してくれ」と命令されていたのです。しかし知盛は浮かんできませんでした。そこで、その家来もパッと弓を捨てるや、自分も海へ飛び込んだのでした。

さあ、泣いてください!と言わんばかりの感動!……この場面で泣かない奴は、日本人じゃありません!

まとめ

長々失礼しました。お疲れ様です。

平家はみ~んな同じような名前なんですが、キャラクターは意外とバラエティーに富んでますよね。マッチョ系から貴公子キャラまで様々です。この中から「お気に入り」が見つかると、もっと平家物語が楽しくなりますよ!

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著者プロフィール

坂口 螢火
坂口 螢火
歴史専門のライターを目指しています。

古典と神話が好きすぎて、ついに家が図書館のように……。

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Posted by 坂口 螢火