【西遊記】沙悟浄ってどんなキャラクター?ホントはカッパじゃない!

西遊記のキャラクターと言えば、孫悟空、八戒、沙悟浄(さごじ情報ょう)。この中で一番どうでもいいキャラで、影が薄い奴が沙悟浄ですよね。

原作では、「乱暴者の孫悟空」「食ってばっかりの八戒」に対して「生真面目でマトモな奴」って感じで沙悟浄のキャラが決められてます。だから出番が少なくなってしまったわけですが……。

ここでは、ほぼ知られてない沙悟浄の人生と性格について詳しくまとめます!

ざっくりと!沙悟浄の人生(?)

沙悟浄は妖怪として登場しますが、元々は妖怪じゃありません!天界に住んでいる役人だったのです。天帝の宮殿を守るのがお仕事の捲簾大将(けんれんたいしょう)とかいう役目なのですが……覚えなくていいですよ。

さて、役人だった沙悟浄(この時は沙悟浄って名前じゃないですよ)、ある時、天帝(天界のボス)がコレクションしてたお宝のお皿を割ってしまいます。これに天帝ブチ切れ(この天帝、けっこうキレキャラなんです)。

「ヒ~ッ、許して~」と泣いて謝る沙悟浄ですが

「ええい、許さん!オレのコレクションを割りやがって!下界に突き落としてくれるわ!」

と、まあこんなわけで天界から追い出され、拷問のあげく、下界にピューッと落とされ、そのまま流砂河(りゅうさが)という川にダイブ。以後、この川に住むことに。

ところで、この時の天帝の拷問が凄いです。

〇800回ムチの刑

〇7日に一度は剣が降って来て脇腹をグサリの刑

……天帝、むごすぎます。これですっかりグレた沙悟浄。「何にも食べ物がなくて腹ペコだ!ここに来た旅人を食ってやる!」と、旅人をガツガツして飢えを満たし、とうとう妖怪の姿に……。

さて、こんな沙悟浄の元に、ある時観音様が出現。

「いいかい。この後、天竺に行く坊さんが来るから、その坊さんの弟子になれば、お前は救われるよ」

このアドバイスに沙悟浄感激。予言通りにやってきた三蔵法師の弟子になり、天竺に行くことになったのでした。

沙悟浄はカッパじゃない!すごくヘンな姿をしている

さて、日本では「沙悟浄はカッパ」と言われていますが、これはマチガイです!

沙悟浄は三蔵法師の弟子の中では唯一人型をしています。……でも、日本にはいないタイプの姿の妖怪。これを中国語から日本語に翻訳する時、当時の翻訳家は困ってしまいました。

「困ったなあ~。どう説明する?」

「沙悟浄は流砂河に住んでいた妖怪なんだし、いっそカッパってことにしようぜ!」

「おお、それなら子供が読んでも分かりやすいぜ!カッパに決定!」

と、こういうテキトーな判断で、沙悟浄はカッパにされてしまったのでした。

では、本当はどんな姿をしているかと言いますと、これがかなり不気味な姿です。

〇肌の色は青黒い。

〇髪の毛はふわふわで紅い。

〇目玉は丸くて光る。

〇声は雷みたい。

〇首に今まで食べた九人の人間の髑髏をネックレスにして下げている。

……こんな感じです。う~ん、カッパとは程遠いですね。

沙悟浄の性格は?

沙悟浄は三人の弟子の中では一番地味で、あんまり口をきかないし、出番ないし、影が薄いです。でもこれは、沙悟浄が三人の中で一番真面目だからなんです。

沙悟浄は「言われたことをきちんと真面目にやるタイプ」です。いつも兄弟子の孫悟空に「あれやれ、これやれ」と命令されて、それを怠けることなくこなしてます。悟空から命令される、一番多い仕事は

「沙悟浄!オレが妖怪を退治するから、お前はお師匠様を守るんだぞ!」

です。悟空が派手に暴れ狂っている間、沙悟浄はじ~ッと三蔵法師を守ってます。悟空は八戒よりも沙悟浄の方を信用していて、

「弟よ、お前は人がいいから、八戒の口車にのせられぬようにしろよ」

と言っています。

沙悟浄のアイテムは?

沙悟浄のアイテムは二つしかありません。

九つの髑髏

これは流砂河に住んでいたころ、腹ペコのあまり食べちゃった旅人の髑髏です。ひもに通して首に下げてます。でも、三蔵の弟子になったらイキナリ自然消滅しました。

宝杖

沙悟浄の武器。半月型の刃が先っぽについています。月(月宮殿)に生えてる植物で作った杖だそうで、悟空の如意棒みたいに固くて折れません。

中島敦の沙悟浄

日本の文豪、中島敦(山月記を書いたエライ人)は大の西遊記ファン。自分のオリジナルの西遊記、「我が西遊記」という作品を作っています。惜しむらくは、この人、あまりに早死にしてしまって未完ですが……。

この西遊記では、何と主人公が沙悟浄!沙悟浄が旅の記録係になって、「こんなことがあった。あんなことがあった」と本を書いている、という内容なのです。

「我が西遊記」の沙悟浄は、かなり性格が独特です。「オレはダメだ……」「オレはバカだ……」といつも劣等感のどん底にあるという大変鬱な毎日を送って苦しむ沙悟浄。そこで観音様が

「沙悟浄よ、三蔵と一緒に自分探しの旅に行ってこい!」

とアドバイス。悟空や八戒の影響を受けて、だんだん前向きになっていきます。大変面白いので、是非ご一読を。

このお話はこの本に収録されてます。読んでね!

まとめ

沙悟浄は「三人の弟子の中で唯一人型」キャラ。妖怪ですが大人しくてとっても生真面目。他の二人はハチャメチャですから、沙悟浄みたいな大人しいキャラがいないかったら、あっという間に三蔵一行は崩壊してしまったことでしょう。

目立たない地味なキャラクターですが、いないと寂しい沙悟浄です!

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著者プロフィール

坂口 螢火
坂口 螢火
歴史専門のライターを目指しています。

古典と神話が好きすぎて、ついに家が図書館のように……。

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Posted by 坂口 螢火