平家物語の義経はキャラが違う!実はかなり悪党
平家物語で主役級の重要キャラと言えば、やっぱり源義経(みなもとのよしつね)ですよね!源平合戦のドラマを見るときは、義経が一番楽しみ!という方も多いのでは?
でもしかし!平家物語の原作に登場する義経は、ドラマや小説に描かれる義経と、全然キャラが違います!ぶっちゃけ悪党でろくでなしです。
このページでは、「原作義経」がどんなキャラか紹介します。
ドラマの義経ってこんな感じ
皆さん、源義経っていうと、だいたいこんなイメージがありますよね?
1.とにかく貴公子
2.超絶美男子
3.笛を吹き鳴らしながら弁慶と戦って勝利
4.ピュアすぎる性格
5.部下に優しくて親切
ドラマではフツー、こんなイメージで描かれてます。こんなにミラクルな義経だけど、その人生はかわいそすぎ。平家を叩き潰したのに、実の兄頼朝に邪魔者扱いされてハメられたあげく、平泉で自害……。
美形で天才で貴公子で薄命!まさに日本人好み一直線の義経です!
義経の人生は?究極に短くまとめてみた!
義経の人生は波乱万丈です!お父さんは源氏の大将だけど、義経が産まれた瞬間死亡!平家のリーダー清盛(きよもり)が、源氏をぶっ潰したのです。
強制的に寺にぶち込まれた義経ですが、このままだとボーズにされちゃうので、十六歳の時に平泉にトンズラ。数年後、兄の頼朝が平家に挙兵したので、「すわッ」と兄の元へ駆けつけます。
その後、合戦でムチャクチャ勝ちまくった義経は平家を壇ノ浦でぶっ潰します。が、彼の人生の絶頂はここでフィニッシュ。頼朝が「源氏の大将が二人いるとメンドクサイ」と、義経を討伐しちゃうのです。義経、逃げまくったけどお兄ちゃんにはかないません。アッサリやられちゃったのでした。
享年、三十二歳です。
ここから本題!ホントの義経は?
さて、皆さん気になる「平家物語義経」!
ただ、ここでちょっと予習。実は、平家物語には、義経少年時代は書いてないです。大人になって、平家と戦ってる義経が初登場。それに、平家物語はあくまで「平家の物語」ですから、平家滅亡後、義経が殺されちゃうシーンも書いてないのです。
義経の全生涯を読みたいと思ったら、「義経記(ぎけいき)」もあわせて読む必要があります。分かりやすく説明すると、こんな感じ……
1.赤ちゃん義経(義経記)
2.少年義経(義経記)
3.青年義経(義経記)
4.合戦大活躍義経(平家物語)
5.頼朝に嫌われる義経(平家物語)
6.逃亡義経(義経記)
7.死んじゃう義経(義経記)
つまりですね、イケイケで戦ってるところ以外は、全部義経記で読んでね!ってことです。
【義経記エピソード】人殺し、放火、何でもアリ!危険人物すぎる義経
義経は京都のお寺(鞍馬寺)にぶち込まれてましたが、ボーズになりたくないので、十六の時に「金売り吉次」という商人に助けてもらって(商人の一団の中に入れてもらった)、寺を逃亡。平泉を目指します。
が、その道中!義経は以前「もし源氏が旗揚げしたら味方しますよ」と言っていた武士のことを思い出して、
「おい吉次、オレはあいつをリクルートしてくるから、ちょっと先に行っていてくれ」
と、単身、武士を誘いに行きます。ずかずかと館に上がり込み、
「子分になれ」
と、超エラそうに命令。一方武士は……「困ったな~。以前は源氏の味方だったけど、今は息子たちが平家の家来になってるから、今更こいつの味方するわけにいかないな~」と困り果ててます。
すると、それを見た義経、
「お前なんか生かしておく価値もない」
と、イキナリ館に放火!武士一家を全員焼き殺してしまいます!
さて、吉次は戻ってきた義経に「ねえ、例の武士は味方になったんですか?」と尋ねたんですが、義経はシャーシャーと
「ああ、あいつなら味方にならないから焼き殺してやった」
な、何という悪党ぶり!これを聞いた吉次は「お、恐ろしい……Σ(゚Д゚)」とビビりまくったとか。当たり前ですね。
【義経記エピソード】激レア兵書をドロボー。強盗義経
またある時、義経は鬼一方眼という超怪しげな陰陽師が、超激レアな軍学本(これを一読すれば、どんな戦にもヘイチャラで勝てるよーになるとゆー、聞くからに怪しげなブック)を持っているという情報をゲット。イキナリ鬼一方眼の館に行くと、縁側にずかずかと上がり込んで、
「おい、お前が持ってる本は宝の持ち腐れだ。貴様が持っていたところで一字も読めまい。オレ様によこせば、あっという間に読み込んで、礼に中身を教えてやってもいい。さあ、よこせ」
と、ありえないほど高飛車な態度。う~ん、サイテーですね。
もちろん鬼一方眼、了承するはずがありません!「ふざけんな!出てけ!」とわめくのですが、義経はあらゆる苦情を全部スルー。勝手に館に上がり込み、勝手に一室占領して住み込んでしまいます。鬼一方眼はキレますが、義経が強すぎるので追い出せません……。
しかも義経、激レア兵書がどこにあるのか分からないので、強硬手段をとることにします。鬼一方眼の愛娘に襲い掛かり、散々手ごめにしたあげくに、この発言!
「オレと寝たことを親父にバラされたくないだろ?さっさと本をよこせよ。お前なら盗んでこれるだろ?」
かわいそーな娘は泣く泣く激レア兵書をパクってきます。義経はそれを読んじゃうと、さっさと館をトンズラしたのでした。
【義経記エピソード】部下を全員無視!勝手に暴走義経
義経が頼朝挙兵を聞いて、お兄ちゃんのいる伊豆まで走っていくときのことです。
平泉から伊豆まではかなり遠いです。東北から神奈川まで。う~ん、何十キロあるのでしょうか?ところが義経、馬にまたがると
「行くぞ!休むな!オレに続け!」
と、イキナリ爆走。部下たちはこのとき三百人いたそうなんですが、「ひ~!待ってくれ大将!」と、一生懸命追いかけてくるのを、全然待ちません!部下たちは義経のあまりのスピードに全然ついて行けず(義経は乗馬の名手で、しかも乗ってる馬は平泉でもピカ一の名馬)、ついには部下たちの馬のひずめが割れちゃったり、泡吹いて倒れちゃったり……。次々と脱落してしまいます。
それでも爆走を続ける義経。一度も休憩を取らず、全然馬を止めようとしません。ついに部下たちが根を上げて
「義経様!ついてくる部下がついに百人足らずになってしまいました!」
と苦情を言うのですが、
「そんなもん構わん!ついてくるのが十人になろうが、馬を止めるな!」
と、伊豆まで駆け通したのでした。
【平家物語エピソード】一の谷の合戦!部下に自殺行為を強いる義経
源氏と平家の一大決戦、一の谷!
源氏は平家をぶっ潰す気満々ですが、何分、平家が陣を敷いた一の谷が天然の要塞過ぎて、なかなか落とすことができません。何しろ、前は海、後ろは断崖絶壁なのです。
「どうしようかな~」
と、攻め方で頭を悩ます源氏の重臣たち。が、その時義経が突然からからと笑って、「オレに任せろ」と、三千機を率いて行先も告げずに行ってしまいました。
どんどん軍を進めていく義経。そのうち日が暮れまして、兵たちが
「もう真っ暗だ~。これ以上進めませんよ!」
と騒ぎだしますと、何と義経、近くの民家に放火!
「どうだ、これで明るくなったろうが」
哀れな民間人は完全無視。兵たちを進めたのでした。
こうして翌朝、たどり着いたのは一の谷の断崖絶壁の上!俗に「鵯(ひよどり)越」と呼ばれる、「まるでびょうぶを立てたような」切り立った崖です!見下ろせば、平家の本陣が真下に……。
「おお、真下が本陣ですな」「しかし……ここからでは降りられませんな」
と部下たちは思案していたのですが、そこに義経の鶴の一声。
「皆の者!ここを駆け下りるぞ!」
「エッ……」と絶句する兵たち……。自分の耳が信じられません。「無理です!」「イヤです!」「死にます!」と泣き泣き抗議。しかし義経は容赦がなくて、
「やかましい!馬を二頭落とせ!」
と命じ、超イヤがってる馬を崖から二頭突き落とします。すると――一頭は必死に立ち上がりましたが、もう一頭は首の骨を折って死亡。兵たちはそれを見てさらに真っ青。……ですが、義経はそれ見たことかと言わんばかり。
「見よ!一頭は立ち、もう一頭は動かぬ!うまく手綱をさばけ!オレに続け!」
叫ぶや否や、真っ先に降りて行ってしまったのでした。兵たちは半泣き状態。「いやいや、あれは死んでるでしょ。無理です!」なんて言えません。大将が行ってしまったら、どんな所でもついて行かなきゃならないのが武士の定め。
「ええい!大将に後れを取ってはならん!」
と半ばやけくそで降りていきます。途中、馬がどうしても動かなくなって大泣きする者あり、失敗して墜落する者あり……。それはそれは大変だったのでした。
【平家物語エピソード】屋島の戦い!大ゲンカ、脅迫、超怖い義経
屋島の戦いでも、義経はやらかします。
屋島というのは、四国に当時あった島(今は地続きなんです)。平家はこの島に本陣を構えてるので、源氏は四国まで船で追いかけなくっちゃなりません。
ところが!いきなりやって来た台風で船は出せない。しょうがないので、源氏の重臣たちは「嵐が過ぎ去るまで、作戦会議しよーぜ」と、ダラダラと会議してました。
が、この会議で義経、梶原景時(かじわらのかげすえ)という武将にさんざん悪態ついて超大ゲンカ。景時もぶちッとキレて、
「九郎殿(義経のこと)はお若い!良い大将軍とは、進むべき時に進み、引くべき時に引く。兵の命を守って敵を滅ぼす。この間合いをわきまえねばならんのだ! 九郎殿のように、ただがむしゃらに攻める一方の者は猪(いのしし)武者といい、立派な大将とは言えぬわ!」
と、火を噴くほどの勢い。……義経も負けてません。さらに言い返します。
「猪(いのしし)だろうが鹿(かのしし)だろうが構わぬ、勝手にしろ! 戦はただ攻めに攻めて勝つのがよいのだ!」
いや~、売り言葉に買い言葉ですね。会議はこれでお開きになっちゃったそうで。ご愁傷様です。
が、義経の暴走はこれでとどまりません!その晩、嵐はますます荒れ狂ったのですが、義経は何と船頭たちを集めて言い放ちます。
「これから屋島に行くぞ。船を出せ」
これには船頭たち仰天!
「無理です!こんな嵐の中、船を出したら絶対沈みます!」「殿!お考え直し下さい!沖はここより、もっと荒れてるに違いありません!」
ところが、義経は全然聞きません。逆に怒鳴り返して
「やかましい、大将の命令が聞けぬか!船頭が海で死のうがどうだというのだ。この風は屋島に向かって吹いている。この風に乗っていけば、屋島にすぐにつくに違いない。者ども!こいつらを全員射殺せ!」
と、部下たちに命じて、船頭たちを弓矢で射殺しようとします。これには船頭たちも大泣きして
「出します!船を出すから殺さないでください~!」
と、渋々船を出すことにしたのでした。
船は超ラッキーなことに沈むことなく、屋島についたのですが……う~ん、義経相当ムチャクチャしてますね。運が悪かったら全員水死してたわけだし。周りの人たちは寿命が十年ほど縮みそうです。
でも、この作戦のため、普通数日かかる屋島までの船旅が、嵐のためにたった四時間で到着。平家はあまりの速さに仰天しすぎて敗走。義経、トンデモナイ奴ですが、やっぱり天才なんですね。
【義経記、平家物語両方エピソード】女癖悪すぎ!とにかくだらしない義経
義経記には義経の女癖の悪さがこれでもかってくらい書かれてます。何と義経、都にいた時に「せっせと通ってる女」が、何と二十四人もいたとか!しかも全員同時進行です。せっせと通ってないのを合わせたら、いったい何人いたのでしょうか……。
さて、平家物語によれば、壇ノ浦の合戦の後に、生き残った平家の公達は全員捕虜になりました。その捕虜の中に平時忠(ときただ)という公達がいたのですが、
「このままでは首を斬られてしまう。何とかならないか……」
と、彼は一計を案じます。
「そうだ!判官(はんがん。義経)は女にだらしがないことで有名だ。わたしには娘が大勢いる。このうちの一人を差し出せば、わたしは判官の親戚。斬られることはあるまい」
もともと田舎者の義経。平家の姫君といえば、まさに深窓の令嬢、極上の宝石です。申し出を聞くなり、すっかりのぼせ上って有頂天。一も二もなく飛びついてしまいます。正妻は放ったらかしで、平家の姫のために館を建て、デレデレに寵愛するのです。
その上あろうことか……義経はこの時、「世の中に出てはならぬ平家の機密文書」を持っていたらしいのですが、(内容は不明)、この平家の姫に
「父が手紙を返してほしいと言っていますの」
とすり寄られて、
「いいとも、いいとも。返してやるよ」
と、封も明けず、確認ゼロで時忠に返却してしまいます!平家にとってヤバい手紙は、時忠の手でサッサと焼却……。文書の確認もしない。政敵の平家の姫を妻にもらう。「政略」ということをカケラも考えない、無神経にもほどがある行動です。
この義経の身持ちの悪さ、いい加減さはたちまち宮中の笑いものになりました。義経は宮中に招かれて、天皇の儀式にも出席したのですが、貴族たちは彼をつくづくと見て、
「平家の中で最も劣ったクズよりも、なお卑しい田舎者ですな」
とコテンパンに非難されたとか。
部下たちもいい加減うんざりしたみたいで、義経記には
「義経が都落ちする時、義経は寵愛していた女たちを二十四人全員連れて行って、部下たちは『いいかげんにしてほしい!』と苦情を言った」
と書いてありますよ。
まとめ
長々とお疲れ様です。
義経の「貴公子イメージ」は、能が発展した室町時代、芝居を美しく面白くするために作られた、後世のイメージです。ですから現在のドラマも、義経は貴公子イメージなんですが……。平家物語と義経記じゃあまりにも違いますね。
どっちの義経が好みかは読者次第!わたしはどっちも好きですよ!
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著者プロフィール
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