「曽我兄弟より熱を込めて」の疑問に答えたよ!
Amazonキンドルで出版してる拙作「曽我兄弟より熱を込めて」について。
Twitterでいくつか質問があったので、まとめて疑問点にお答えします!
五郎が松を引っこ抜くシーンについて
「兄弟の弟、曽我五郎が松を引っこ抜く場面がありましたが、あれはどこから引用したのですか」という素朴な疑問について。
講談本に載ってたんだよ
曽我兄弟の史料は、けっこういっぱいあります!大きく分けますと
- 曽我物語(これが真名本、仮名本、流布本の三つのバージョンがある)
- 講談本
- 歌舞伎
この三つ。この三つの史料が、それぞれ全然違う内容なので要注意です!これには載ってるけど、こっちにはない、というエピソードがゾロゾロあります。
わたしが「五郎が松を引っこ抜く」という場面を引っ張ってきたのは、このうちの講談本です。むか~しの講談社の「少年講談 曽我兄弟」っていう本に載ってました。
これです!古すぎて(昭和11年)なかなか手に入りにくいことが難点ですが、大変渋くていい本です。やっぱり講談社で、子供向けに絵本も出てますよ。
いや~、この表紙はいつ見てもカッコイイですね(わたしはこの表紙欲しさに買っちゃいました)。この絵本に、五郎が松を引っこ抜く絵が載ってます。
……正直、こんな太い木を引っこ抜いたなんて、絶対嘘だろって気がするのですが……五郎は怪力だからできるんです!気にしちゃいけません!
松を引っこ抜く場面はこんな話
北条時政(ときまさ。源頼朝の義理のお父さんだよ)の館で、元服させてもらった五郎。時政は五郎の顔をつくづくと見て、
「五郎よ、そなたは身体も大きく、力も強そうだ。庭に祐経が植えた松があるけど、あれが抜けるか?(本によっては、枝を折ってごらんと言っている)」
と、イキナリとんでもない発言。これで抜けなかったらどうすんの?って感じですが、そこは五郎なので問題ないんです!
「仇の植えた松なら、松と言えども仇同然!」
と庭に飛び出し、ガッキと松に組み付くや
「今は盛りの常盤木も、必ず終わりはあるものぞ!」
と、松を引っこ抜いちゃったのでした。
以上が「五郎、松を引っこ抜く場面」のあらすじ。五郎はいろんなところで怪力を発揮するキャラクターなのですが、この松のシーンが、記念すべき「怪力エピソードその一」です。
五郎、イジメに遭うシーンについて
「兄弟が子供のころ、弟の箱王が近所の子供にいじめられる場面がありましたが、どこから引用しましたか」という質問について。
「城前寺本 曽我兄弟物語」に載ってたんだよ
これは、「曽我物語」や「講談本」、歌舞伎にもないエピソードです。曽我の土地に伝わっている伝説で、曽我兄弟の菩提寺、城前寺が出している本に載っていました。なんでも、「曽我兄弟遺跡保存会」という素晴らしい会があって、そこがまとめた本らしいですね。
アマゾンで売ってるので宣伝しときます!
これは名著ですよ。他の史料では全然お目にかからないエピソードや、遺跡にまつわる伝説がこれでもかってくらい書いてあります。「曽我物語」に満足できない方にはお勧めですね。
わたしが一番感動したのは、十郎がまだ八歳だった頃、近所の不動様に「祐経を見事に討ち果たせるように」と願文を書いたのが、全文載ってたことです。しかも写真付き。
まだ八歳だというのに……十郎はメチャクチャ達筆です。さすが十郎、歴史に名を残す武士は、やっぱり子供のころから何かが違うんですね。
これがその写真。凄いでしょ?
「五郎がイジメに遭った場面」はこんな話
まだ兄弟が幼くて、兄が一萬(いちまん)、弟が箱王(はこおう)と呼ばれていた時です。
箱王はその後の五郎ですから、この頃から暴れん坊将軍です。隣の家――平(たいら)といいますが、ここの子供らと喧嘩をしまくり、平の悪ガキの方が年上なのに、コテンパンに叩きのめしてしまうという腕白ぶり。
ある日、この平家の悪ガキどもが箱王に負けた悔しさに
「やいやい、調子に乗るな!貰いっ子のくせに」
と悪口を叩きました。……この時まで、自分が連れ後だったことを知らなかった箱王。仰天して兄の元へ走ります。
「兄様!今わたしは、平の子供らに貰いっ子だとはやし立てられました。これはどういうことですか」
実は、一萬は幼い弟を傷つけたくないばかりに、今まで事実を隠していたのです。一萬は箱王を前に座らせて、数年前に本当の父が殺されてしまったこと、その後、母が曽我太郎と再婚して、自分たちはこの家に連れ後として引き取られたことなどを話します。
これを聞いて、箱王はワッと泣き出し、一萬は弟を抱いて慰めるのでした。
何といういじらしさ!心ある人はここで泣いてください!
まとめ
今回、Twitterで聞かれた質問について答えました。もし、他にも疑問点があったらお尋ねください。できるだけお答えします!
「曽我兄弟より熱を込めて」は立ち読みも大歓迎!ぜひ読んでね。
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