【忠臣蔵】吉良邸討ち入り、講談のあらすじまとめ

2021年10月21日

日本史に残る名場面、赤穂浪士の吉良邸討ち入り!覚悟を決めた四十七人が、黒白だんだらの装束に身を固め、雪の中、いっせいに仇の館へ……。

いつ見てもカッコいいですね~。しかし、最近はドラマや映画も少なくなりましたので、案外、この討ち入り場面のあらすじをご存知ない方もおおいのでは?

このページでは、忠臣蔵の白眉、吉良邸討ち入りのあらすじを、講談にそってまとめます(史実はまた別の機会に)!

運命の12月14日!義士たち集合!

吉良上野介が吉良邸に確かにいると確認が取れた、12月14日!(吉良は隠居していたので気楽な身分。しょっちゅうあっちこっちに出かけていたのです)

義士たちは昼過ぎから、吉良邸にほど近い堀部安兵衛(ほりべやすべえ)借宅、杉野十平次(すぎのじゅうへいじ)借宅へと集まります。集まった義士たち、用意してあった討ち入り装束に着替えました。

この装束は

〇黒の小袖、袖に白布を回してある。

〇襟には「浅野内匠頭(たくみのかみ)家来 △△」と、自分の姓名が書いてある。

〇火事頭巾

〇籠手(こて)と脛当(すねあ)て

〇鎖かたびら

〇武者草履

まあ、これがスタンダード。内蔵助(くらのすけ)なんかは、内匠頭の奥さんから頂いた紫の頭巾をかぶってます。

腕に巻いてある白い布は、敵味方を間違えないために付けた目印です。

それから時間になるまで時間つぶし。みんなでやる気満々、武器の手入れをしたり、ご飯食べたり。このご飯も縁起をかついで「首尾よく手打ち(手討ち)ソバ」「勝ち栗」などなど。でも、あんまりボリューム感ないですね。

内蔵助、注意事項を確認する

さて!全員集合。内蔵助が上座に座って、今夜のルール事項を再確認。「吉良が見つかったら呼子をふけ」とか、「用心棒の強い奴には3人くらいで当たれ」などなど。

そして最後に

「万が一、吉良を討ち漏らしたその時は、館に火を放ち、全員割腹のこと!」

おお……この覚悟の物凄さ。映画とかでも特にカッコいい場面です!

雪の日の行進!四十七士、吉良邸へ向かう

外は大雪!江戸じゅう純白に染まってます。覚悟を決めた四十七士が、討ち入り装束に身を固めて借宅を出ます!

よく映画とかでは、集合場所が蕎麦屋になっていて、階段を堂々と降りていく大勢の義士たち。驚いた店の主人が「ワアッ」と腰を抜かしている目の前で、義士の一人がジャリンッと代金をテーブルに投げ出す……という劇的場面が。このパターンもカッコいいですね~。

ザッザッザッと足音も勇ましく、雪道を走り、やがて着いたる仇の館。大石内蔵助はぴたりと止まって、サッと采配を上げます!

いよいよ始まり!内蔵助の陣太鼓。義士たち、二手に分かれる

「さて方々、今宵を最期と思い切り、存分に働かれよ!」

内蔵助がカッコよく下知すれば、ササッと義士たちは表門と裏門との二手に分かれ、裏門組はぐるっと館を回って裏門へと張りします。

表門は大石内蔵助はじめとする24人。裏門は大石内蔵助の息子、主税(ちから)を大将とする23人です。

表門突破!吉良邸に飛び込め!

さあ、始まりました!吉良邸討ち入り!

大石内蔵助が、ドーンドーンと陣太鼓を打ち鳴らす!

「ソレッ!乗り込め!」

真っ先に縄ばしごを門にかけて、するすると登っていったのは大高源吾(おおたかげんご)ひらりと中へ飛び込んで、門の閂(かんぬき)を開けます。外で待っていた23人、ワアッと歓声上げて飛び込みました!

これには別バージョンも。大高源吾に続いて、他の義士たちもどんどんはしごを登って、屋敷内に飛び込むのです。大石内蔵助も最後に飛び込んで、再びドドンドンドンドンと陣太鼓を鳴らします。

裏門大破!ガンバレ大石主税!

裏門組も遅れちゃいません。

「表の者に遅れるな!門を打ち破れ!」

大将は大石主税ですが、この時主税は若干15歳。主税は突撃部隊に移り、実際の指揮をとるのは吉田忠左衛門62歳。

「それっ」

と、三村次郎左衛門(みむらじろうざえもん)と杉野十平次が、大槌(おおづち)ふるって門を叩き壊します。門が壊れるや、

「故浅野内匠頭が家来、亡君の仇を報ぜんと推参(すいさん)仕(つかまつ)った!」

と、いっせいに雪崩れ込んだのでした!

堀部安兵衛、清水一学と一騎討

ここから、四十七士と、吉良の家来との戦いが始まります!

吉良は「浅野の連中が仇討ちに来るかも……」と内心ビビってたので、腕の立つ用心棒を抱えていました。清水一学(いちがく)、小林平八郎、鳥居理右衛門(とりいりえもん)、和久半太夫(わくはんだゆう)の4人です。

清水一学、真っ先に庭に飛び出して怒鳴ります。

「やあやあ、赤穂の痩せ浪人!」

それに立ち向かったのは赤穂藩きっての剣客、堀部安兵衛です。

「我こそは赤穂藩の堀部安兵衛なり!」

「米沢藩、清水一学。来い!」

しばらくは睨み合い……。どっちも大変な剣客。うかつには近寄れません。

しかし、勝負は一瞬!「やッ!」と斬りつけた安兵衛の一撃。一学ははっしと受け止めようとしましたが、あまりの剛剣。受けきれずに頭を割られて、どうッと倒れたのでした。

う~ん、清水一学って「超ハンサム、二刀流の達人!」とか言われて、芝居じゃ必ず二枚目俳優がやるんですがね、けっこうアッサリ死んでます。もうちょっと粘っても良かったんでは?

大石主税、鳥居理右衛門と一騎討

最年少の主税も必死に働いています。彼は吉良の屋敷に駆けあがるや、

「吉良はどこだ!」

と、座敷から座敷へと走ります。が、ここに思いもよらぬ強敵。

「待てや、小童(こわっぱ)!」

目の前に立ったのは雲突くような大男。何と、用心棒の鳥居理右衛門(とりいりえもん)です!

主税もこれにはギョッとしました。用心棒はあまりの強敵。必ず3人でかかれと言われてるのに……。

ですが、周りを見ると味方が全然いません。主税は覚悟を決めます。

「相手に不足なし。行くぞ!」

こうなったら死に物狂いです!必死に槍を突き出す主税。でも鳥居は「アハハハ」と余裕しゃくしゃく。どんどん主税を追い詰めます。

とうとう庭に駆け降り、ついには池のほとりまで追いやられた主税。

「アアッ」

仰向けざまに池に転落!主税、絶体絶命です!

「もうよかろう」

ニヤリと笑った鳥居理右衛門、グサッと槍を突き入れます、が、ここで思いもよらぬ反撃が!

死に物狂いの主税、突き出された槍先にいきなりしがみつき、びっくりして槍を引き上げた鳥居の力を利用して、池から這い上がったのです。そして、とっさにぬいた太刀で鳥居をグサリ。

まさに、一念岩をも通す!大石主税、弱冠15にして大手柄を立てたのでした。

吉良の忠臣、鈴木松竹少年

鳥居を倒した大石主税、再び座敷の奥へと駆け込みます。すると……

「赤穂の瘦せ浪人!これより先は一歩も通さぬ!」

と、突然とびかかって来た者が。見れば、まだ12、3、の茶坊主ではありませんか!子供ながら必死に短刀振るい、力に斬ってかかります。

ところでですね、四十七士は「女子供は斬ってはならない」と約束を交わしていました。まあ、こんな約束がなくったって、関係ない子供を斬ろうとする人なんていませんが……。

「小僧、危ないぞ!どいてくれ、頼むから……」

主税はアワアワしながらかき口説きますが、小僧は全然聞く耳持ちません。弱ってしまった主税、近くに不破数右衛門(ふわかずえもん)が来たのを見て、すかさずバトンタッチ!

「不破殿!これを頼みます!」

と、さっさと逃走。不破数右衛門は「心得た!」とやって来ましたが、相手を見てゲンナリ。「こりゃ困った……」と、今度は片岡源五右衛門(かたおかげんごえもん)に押し付け。

「頼むよ!じゃあ!」

とスタコラ逃亡。押し付けられた源五右衛門も「え~、これ?俺だってヤダよ」と、

「誰か来てくれ!強敵、強敵」

大声で叫ぶと、そこに来たのは四十七士中、トップのうっかり屋の武林唯七(たけばやしただしち)。

「強敵ってこれかい!」

と、唯七も拍子抜け。

「めんどくさいなア。峰打ちを食らわせて、気絶させてしまえ」

そう考えて、ポンッと叩いたのですが……うっかり者なもので、刀の刃の方で叩いてしまいました。

あわれ松竹少年はバッサリ。唯七は「しまった!もう繋がらないかな……」と後悔しましたが、後悔先に立たずです。

武林唯七、和久半太夫を斬る

さて、誤って少年を殺してしまって、しょげかえっていた唯七ですが、にわかに凄まじい斬り合いの音が聞こえて、慌てて外に飛び出しました。

見れば、そこで刀を振るっているのは、大石主税の次に若い矢頭右衛門七(やとうえもしち)、17歳。もの凄い大男の用心棒を相手に、必死に戦っています。

右衛門七は頑張ってますが、相手の男は段違いの腕前。

「いかん!このままでは右衛門七がやられる!」

瞬時に判断した唯七、「待て!オレが相手だ!」と、二人の間に割って入りました。

「ええい、何だ貴様は。我は和久半太夫(わくはんだゆう)なり!」

「おお!オレは武林唯七だ!」

両人、刀を構えてキッと睨み合います。唯七も大変な剣客。相手を見る目は確かです。ですが、この時は

「畜生、奴の方が腕前は上だ……」

と直感。しかし諦めません!

「よし!斬り合いなら負けるが、相打ちならいける!」

と決意して、刀を真っ直ぐに構え、身を丸めると、イキナリすごい勢いで「エイッ」とまっしぐらに斬りつけました!まるで特攻隊です!

「ワアッ」と驚いた和久半太夫。とっさに斬りつけ、唯七はバッサリと肩を斬られましたが、ひるみません。そのまま真っ直ぐに走り込み、グサリとみぞおちを貫いたのでした。

吉良側最強の男、小林平八郎

吉良の用心棒は四人ですが、この中で一番強いと言われているのが小林平八郎です。

この夜、小林は吉良の館から少し離れた長屋にいました。(吉良邸はメチャクチャ広くって、吉良が住んでる館の周りに、使用人が住んでる長屋がずら~ッと並んでいるのです)

「オッ、夜討ちだ!」

跳ね起きた小林、彼は吉良を守るのが役目ですから、斬り合いなんかで時間を潰さないで、一刻も早く吉良の屋敷の中に入らなければなりません。

そこで小林、可哀想な召使から着物をはぎ取って、それを上に着こんで小者に化け、トコトコと吉良の屋敷へと向かいました。が……変装がヘタクソだったらしく、あっという間に神崎與五郎(かんざきよごろう)に声をかけられてしまいます。

「おい!怪しい奴、待たんか!」

小林、オタオタ慌てて「怪しいものじゃありません。タダの小者でございます」

これを聞いた神崎、「はあ?」と怪訝な顔。

当たり前です!「小者」という言葉は、主人の武士が召使に対して使う名称。小者が自分のことを「小者」というワケがないのです!……小林平八郎、腕はたつけど、性格は案外おっちょこちょいですね。

「貴様、小者のわけがない。武士であろう!さあ、かかってこい!」

こうなったら戦うしかありません。小林平八郎、覚悟を決めて神崎與五郎と渡り合います!

刀を抜いたらさすがに強い。さもあろう、小林は「鬼」と呼ばれた剣客。神崎與五郎はたちまち危なくなって、何人も他の義士たちが助太刀に来ましたが、それでも余裕しゃくしゃく。全然歯が立ちません。

どんどん危なくなってきた赤穂義士たち!と、そこへやって来たのは、義士の中で最高齢の堀部弥兵衛(ほりべやへえ)老人、御年76歳!この人、堀部安兵衛の義理のお父さんです。

「ええい、おぬしら、たった一人に何を手間取っているのじゃ!この小僧はわしが引き受けるわ!」

と怒鳴り散らし、

「小僧、来い!」

小林平八郎は天下の豪傑、「小僧」なんて呼ばれたことはありません。カンカンに怒って

「何を!タヌキじじい!」

たちまち始まった激しい斬り合い。弥兵衛老人はさすが威張るだけあって、腕は衰えていません。……しかし、やっぱり高齢者。ついに雪に滑って仰向けにひっくり返ってしまいました。

「ええい、覚悟!」

小林平八郎、思いっきり太刀を振り上げます。弥兵衛老人の命は風前の灯火……。

、ここに孝行息子の堀部安兵衛が登場!

「父上!危ない!」

と、飛鳥のすばやさで小林をバッサリ。見事なプレーで弥兵衛じいさんを助けたのです。

しかし、弥兵衛じいさんは天下一の意地っ張り。

「馬鹿者!拙者は少しも危なくないわい。立って戦うほどの敵じゃなかったから、寝て戦っていたのだ。分からんのか、親不孝者め」

とプリプリしてたそうです。

上野介を探せ!

これで用心棒は全滅。手向かうものもみんな打ち果たしました。あとは上野介を探すだけです。

義士たちは「上野介ッ!どこだ!」と、上野介の寝所へ雪崩れ込みます。ところが!ここで思いもよらない事態。寝所はもぬけの殻だったのです。

「じじいがどこにもいない!しまった、逃げられたのか!」

ここで、冷静に判断したのが茅野和助(かやのわすけ)。布団の中に手を入れて

「まだ温かい!近くにいるはずだ。探せ!」

さあ、それから四十七人、総出で大捜索。天井を槍で突き、襖を全部蹴破り、畳をひっくり返し、押入れを除き、長持ちの二まで取っ払って探します。

「いない……やっぱり逃げられたか……」

ついに、「とうとう取り逃がした。ここで全員腹を斬ろう」と相談がまとまり負けた時、裏門組の指揮をしていた吉田忠左衛門(よしだちゅうざえもん)が

「あいや、方々。腹などいつでも斬れるものじゃ。もう一度探すのだ!」

とナイスな喝。そこで、一同再び捜索にかかりました。

吉良はここだ!ガンバレ唯七!

再び死に物狂いの捜索。と、その時です!一人が寝所の掛け軸を外したところ、そこに何と抜け穴を発見!入ってみると、館の裏手に出ました。そして、そこには小さな炭置き小屋が……。(茶室で使う墨とか食器を入れてる物置です)

間十次郎(はざまじゅうじろう)が耳を澄ますと、中からヒソヒソ声。

「ここか!」

槍を突き入れると、確かに手ごたえ。こちらから矢を数本射かけると、中からバラバラッと二人出てきました。堀部安兵衛が難なく斬って捨てます。

「まだ中にいるぞ!」

武林唯七が飛び込んで、中の人間を引きずり出しました。明るい中で見れば、それは上等の白い寝間着を着た、六十すぎの白髪の老人。

「吉良だ!吉良に違いない!」

全員、躍り上がって喜んだのでした。

吉良殿、お覚悟!

吉良であるかの証拠は、額についているはずの刀傷。これは主君内匠頭が殿中で斬りつけた時の傷です。捕まえて調べてみると、確かにその傷跡があります。

「吉良殿!我ら、故浅野内匠頭の家来。本日、主君の恨みを晴らすべく推参(すいさん)仕(つかまつ)った。いざいざ、尋常にお覚悟めされ」

大石内蔵助が、静かに言って短刀を差し出します。これこそ、主君内匠頭が切腹の時用いた一刀。内蔵助がずっと肌身離さず持っていたのでした。

しかし、未練がましい吉良は黙っているだけで、促しても腹を斬ろうとしません。

「卑怯!」

内蔵助がやむなくとどめを刺し、ついに四十七士は主君の仇を取ったのでした!

まとめ

いや~長々と失礼しました。さすがに忠臣蔵のクライマックスは、書くことがたくさんありますね。読むほうも大変だと思います。

でもですね!これを読んでさえおけば、忠臣蔵の映画を見るとき役に立ちますよ!なにしろ、忠臣蔵のラストって、全員同じ格好をしてますから、「こいつと戦ったのは誰」を押さえておかないと、全く見分けがつかないのです。

この記事が、映画やドラマを見るときのお役に立てば幸いです(^^)

著者プロフィール

坂口 螢火
坂口 螢火
歴史専門のライターを目指しています。

古典と神話が好きすぎて、ついに家が図書館のように……。

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Posted by 坂口 螢火