【西遊記】金角銀角ってこんな奴ら。諸星作品とだいぶ違うぞ!
さて、西遊記に出てくる敵の妖怪といえば、まずはラスボス牛魔王!それから金角、銀角といったところでしょう。
牛魔王は言うに及ばず、金角、銀角はドラえもんの映画にも出ておりますし、誰でも名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?ですが、名前だけはとても有名ですが、
「じゃあどんな妖怪なの?」
と聞かれたら「ええっと……」と、意外と知らなかったりして……。
ここでは、金角、銀角がどんなキャラクターなのか、わたしが大変贔屓の漫画「西遊妖猿伝」と比較しつつ紹介いたします!
坂口が最初に読んだ金角!
実は、わたしが最初に金角を知ったのは「西遊記」じゃありません。小学三年生の時に読んだ諸星大二郎の傑作、「西遊妖猿伝」でして(え?三年生が読むのは異常ですか?)。
これに出てくる金角は、衝撃的にカッコいいです(銀角は割とどーでもいい)。では紹介しますね!
孫悟空、銀角殺害!怒り狂う金角
まず最初に、孫悟空が銀角を殺しちゃいます。どうして殺したかは、けっこう複雑なので、まあ置いといて……これが銀角です↓
どうです?悪そうな顔でしょ?こんなにカッコつけてますけど……次の瞬間、すぐ殺されちゃいます。
グシャッと。ここ、妖猿伝ファンの間ではけっこう名シーン。ううむ、見事に潰れてますね~、銀角。
さて!金角と銀角というのはすごく腕っぷしの立つ兄弟です。銀角はただの乱暴者のパッパラパーなんですけど、金角は割と頭もいい親分。ただのマッチョ系の山賊とはわけが違います!
そんで、この金角。もの凄く弟思い。銀角が孫悟空に殺されたと聞いて怒り狂います。これが金角です↓
怒ってます……。メチャクチャ怒ってますよ!怖いです!
金角、怒りのあまり敵の軍隊に単身突撃!
さらに衝撃シーン!見て下さい。この圧倒的な破壊力!ナウシカの王蟲か幽遊白書レベルです!怒りに我を忘れております。
金角、孫悟空と戦う
さて!愛する弟を殺されて怒り心頭の金角、とことん悟空を追い詰めて一騎討!金角の気迫の凄まじいこと、凄まじいこと……。
何しろ、悟空に砂粒や松の葉っぱを投げつけられても、かえってクワッと目を見開き、その眼力でググっと砂粒が外へ押し出される(ここ、超名シーン)。その上、何と片手で松の大木をメリメリメリッと押し倒すという超人ぶり!
ご覧ください!悟空も跳ね飛ばされております!
ところが……ここで金角にピンチが!この漫画では悟空や金角は人間として書かれておりまして、「お尋ね者」になっているのです。そこで、二人に役人の軍隊が襲い掛かります。
あっ!グサグサと矢が刺さっていきます……。金角ヤバいです。しかし、弟の恨みに燃える金角は怯みません。悟空は役人を見て逃げていくんですが、金角は「逃げるなああ!」と、追っていきます。どんなにハリネズミになっても諦めません!
いかがですか。カッコいいですね、金角……。こんなに串刺しになっても平然としております。ハッタと悟空を睨みつけ、弟の仇を取らんと執念を燃やします。この絵、作者も気合が入ってますよ。「さあ、このカッコよさにしびれろ!」って言わんばかりですね。
この漫画欲しかったらこちら↓
まあ、結局殺されちゃうんですが……。
西遊記の金角、銀角は?
さて、あまりにも「西遊妖猿伝」が好きなもんで、ついつい語りすぎましたが、本物の金角、銀角はどんなキャラクターでしょうか?分かりやすく紹介します!
金角、銀角の宝物
金角と銀角は超仲良しの兄弟の魔王。どんな見た目かといいますとね、昔の絵ではこんな感じ。
う……(;’∀’)
こ、これは何と言いますか。まるでひょうたんを馬鹿みたいに眺めてるバイキンマンじゃありませんか。坂口は、初めのイメージが完全に諸星の金角銀角だったので、この絵を見た時のショックは計り知れませんでした……。
皆さん、分かりますか⁈この衝撃と悲しみ!許せませんよ、こんなバイキンマンなんて!
ちなみに、これはドラえもんに出てきたお二人。
……うん……そうですね。せめてこれくらいのルックスは持っていてほしいものです。
さて、この兄弟は平頂山(へいちょうさん)をアジトにしています。大勢の子分を従えて、毎日「わっはっは」とお酒飲んで遊んでるのですが……こいつらがこんなに威張ってエラソーにしてるのは、スペシャルなお宝を持ってるからです!
〇紫金紅葫蘆(しきんこうころ)……返事をすると中に吸い込まれて、そのうちドロドロに溶けちゃうひょうたん
〇幌金縄(こうきんじょう)……呪文を唱えると、敵をギューッと締め付けるロープ
〇芭蕉扇(ばしょうせん)……あおぐと凄い炎が燃える扇
〇七星剣(しちせいけん)……なんかすごい剣
〇羊脂玉浄瓶(ようしぎょくじょうびょう)……千人でも吸い込むことができるひょうたん
まあ、「吸い込むひょうたんと、すごいロープと扇を持ってる」くらいに覚えておいてもらえればいいですよ。
銀角、悟空をぺちゃんこにする
さて、原作では、銀角が結構活躍します。
金角と銀角兄弟、自分たちの山に三蔵一行が来たので大喜び。
「三蔵法師食べようぜ!あいつは前世からスゲー徳を積んだ坊主だから、三蔵を蒸して食べると不老長生になれるんだぜ!あいつらの中で手強いのは毛むくじゃらの悟空だけだ。あいつさえ何とかすれば、三蔵の肉でパーティーだぜ!」
ウキウキしつつ、銀角が「兄貴、俺に任せろ!」と、飛び出していきます。
さて、三蔵たちの歩いてる道の先で、ボロボロのじじいに化けた銀角。「助けてくれえ。怪我して歩けないよ~」と迫真の名演技。コロッと騙された三蔵、「悟空、背負ってあげなさい」と馬鹿正直にヘルプ。
ところが!銀角は悟空の背中に乗った瞬間、「山を移す術」とかいう術を使って悟空の上に須弥山(しゅみせん)、峨眉山(がびさん)、泰山(たいざん)の三つの山をドーンと乗っけてしまいます!これにはさすがの悟空もベシャッと下敷き。
悟空がウゴウゴしている間に、銀角は三蔵と八戒と沙悟浄の三人を小わきに抱え、「わっはっは!」と風のように帰っていったのでした。
金角と銀角、母親を殺される
さて、銀角は三蔵たちを捕らえたのでホクホク。しかし、用心深い金角は安心できません。
「弟よ、あの孫悟空の息の根を止めないと大変なことになるぞ」
「なあに、兄貴。このひょうたんに吸い込んじまって、溶かしちゃえば問題ないさ。おい、子分ども!悟空をひょうたんに吸い込んで来い。名前を呼んで、奴が返事をすれば吸い込まれるからカンタンだろ」
ここで、こんなに大事なことを手下にやらせちゃうという詰めの甘さ……。手下どもが「ハ~イ!」と言って悟空のところへ来た時には、悟空はすでに山の下から這い出していたのです!
あっという間に手下は悟空に丸め込まれ、宝のひょうたんは取られる。しかも悟空はその足で金角、銀角の母親の屋敷に行って、全然関係ないお母さんまで殴り殺すという暴挙に……。
「何たることだ!母上を殺されるとは!ええい、もう許しておけぬわ!」
怒髪天を突いた銀角。超怒ってます!悟空と剣(七星剣)をふるって大バトル!ついに悟空を縄で縛り上げ、柱にくくり付けたのでした。
銀角、悟空をひょうたんに吸い込む
さて、金角と銀角は有頂天です。
「悟空からお宝は取り返したし、全員捕まえて縛り上げたぞ。あとは美味しく食べるだけだ♪」
と、パーティー気分。お酒飲んでご満悦です。ここで何でサッサと三蔵を食べないのかが、マジで謎です。
ヒジョ~に疑問なことなんですが、今回に限らず、西遊記の妖怪たちは三蔵をさらっては
「わ~い、うまそ~!」
と喜んでるのに、喜んでるだけでグズグズと食べないんです!
「さあ、後は蒸し上げるだけだ!」
とか言ってるくせに全然蒸さない。そうやってノロクサお酒飲んで酔っ払ってる間に、悟空にぶち殺されるというのがお決まりパターンなのです。三蔵ラッキーすぎです!
さて、今回も同様です。金角と銀角が酒盛りしてる間に、悟空はまたもや超頑張って縄から脱出。
「偽名を使えば、あのひょうたんには吸い込まれないだろう」
と考えて、
「おい、銀角!師匠を帰せ!オレは孫悟空の弟の空悟孫だ!」
と怒鳴り込み。でもですね、実はこのひょうたん、名前は関係なくって、返事さえすれば吸い込むという、超便利アイテムだったんです。そこで銀角、ニヤニヤと大声で
「くうごそ~ん」
何にも知らない悟空、「ハ~イ」
そのままヒュウッとひょうたんへ。ハッキリ言ってバカです……。
金角は弟の手柄を褒めちぎって盃を出します。
「弟、お前の手柄は素晴らしいぞ。さあ、盃を受けてくれ」
「兄貴、嬉しいぜ」
と、金角の優しい心遣いと、銀角の感激。ここはなかなか兄弟の仲良しが光る場面です。
銀角、溶けちゃう
さて、このひょうたん。人を吸い込んでそのままフタをしておくと、そのうち中の人はポチャポチャと溶けちゃうのです。このままだと悟空、溶けちゃいます!
これはヤバいと思った悟空、何とか銀角を騙して出なくっちゃと思いました。
「大変だ~!足が溶けた~。助けて~」
わざと大声出した悟空。でも金角は
「ふむふむ。足だけじゃ駄目だ。スッカリ溶けるまで安心できないぞ」
そこで悟空、「わ~ッ、腰まで溶けちゃったよ~。助けて~」
腰まで溶けたら、普通大声出せないと思いますがね。銀角バカだから「やったぜ!」ってフタを開けちゃいます。
その隙に悟空は分身の術を使って、溶けた悟空をひょうたんに残し、本体はハエになってブーンとオサラバ。しかも、銀角の手下に化けて
「ご主人様。お酒を持ってる間、わたしがひょうたんを持ちましょう」
とひょうたんまでゲット。しめしめとほくそ笑み、大声で
「お~い!銀角やーい」
すると銀角、馬鹿正直に
「おう」
とお返事。ヒューンとひょうたんの中へ……。ああ……バカです……。ちなみに、昔の絵ではこんな感じ。
う~ん、銀角、三頭身ですね……。なんか、書き損じのゆるキャラみたいです。
ウマウマと銀角を捕まえた悟空は得意満面。その上、調子に乗ってひょうたんをユッサユッサとシェイク。銀角、ヒョウタンの中でポッチャポッチャと音がするまで溶けちゃったのでした。
金角激怒!悟空と熾烈な戦い
さあ、弟を殺された金角、怒るまいことか……。
「おお!弟よ!オレとお前とは長く山洞の主としてともに映画を楽しもうと思っていたのに。こんなボーズのために命を落とし、兄弟の情を断ち切られるとは!」
号泣しまくって、残ってるお宝の芭蕉扇を持ち出すと、
「貴様あ!この悪猿め!」
と、すごい勢いで扇をバッサバッサ。すると扇から凄まじい炎が噴き出し、たちまち辺り一面炎の海!この炎にはさすがの悟空もタジタジ。あっという間に逃げ出しました。
しかし金角、悟空を追っ払うと、また悲しみに捕らわれて
「ああ……銀角……」
と机にもたれかかってサメザメ……。そのうち泣き疲れて寝てしまいました。
悟空、お宝全部ゲット。金閣ボロ負け
さて、炎にまかれて逃げた悟空が、そ~っと様子をうかがいに来ると、金角は机にもたれかかって寝てます!
「やったあ!」
と、この間に三蔵と八戒、沙悟浄を全員救出。堂々と逃げていきます。
これに気付いた金角、「しまったッ!」と跳ね起きて、親戚一同率いて
「待て悟空!許さんぞ!」
と追っかけました。しかし、お宝は全部悟空の手の中です。かないっこありませんね。
「お~い、金角~」
と、ヒョウタン向けて金角を呼べば、
「おう!」
と馬鹿正直にお返事……。兄弟そろって、案外素直なのかも……。この時の様子はこんな感じ
はい、金角、弟によく似てますね~。
実はもともと妖怪じゃなかった金角銀角
無事に金角銀角をやっつけた三蔵一行。そのまま旅を続けますと、向こうからやって来たのは太上老君(たいじょうろうくん)。つまり天界のエライ人ですよ。
老君、三蔵の前にやって来るとイキナリ
「さてさて、ご苦労じゃったな。お宝アイテムを返しなされ」
悟空が「え?何で?」と尋ねると
「あの妖魔が持ってた宝は、全部もともとわしのものじゃ。ひょうたんは丹を入れるもの。ロープはわしの腰ひも、扇は火をあおぐものじゃよ。それから金角と銀角は、わしの金の炉を守る童子と銀の炉を守る童子じゃ。この二人の童子が勝手にお宝をパクって逃げたんじゃよ」
つまりですね、金角銀角は、もともと太上老君の召使でパシリだったわけです。それが「天上界なんてつまんないニャ~」と、お宝を持ってトンズラしたと……。
当然ですが悟空は怒りましたとも。
「この老いぼれ!サイテーだぜ。自分の召使を放りっぱなしにして、散々人に迷惑かけやがって。てめーの召使くらい、ちゃんと見張ってやがれ!」
ところが太上老君、さすがにお偉方だけあってビクともしません。
「わしの知ったことではない!」
と、もはや尊敬の域に達する開き直り。五つのアイテムをしっかりゲットして、ひょうたんのポンッと外すと、中からもや~っと二つの煙。その煙はまたたく間に金の童子(金角)と銀の童子(銀角)になって、太上老君の左右につきました。
そんで、太上老君は堂々とその場を立ち去りましたとさ。
まとめ
さて、諸星の金角銀角、原作の金角銀角。どっちも味がありますね。ただ原作の方は、どこを突っ込んでいいのか分からないほどマヌケかも……。
「そこで返事をしなけりゃ済むことじゃん!」
と、思わずにはいられません。
まあ、しかし、諸星作品に出てくるこのシーンだけは、原作でも同じで、ちょっと嬉しかったかも↓
著者プロフィール
最新の投稿
- 2024.10.02平安貴族の日記に残る天体現象!彗星、超新星、オーロラまで!
- 2024.09.24保元平治物語に登場する刀剣をまとめてみた!
- 2024.03.20水滸伝のあらすじまとめ。どこよりも分かりやすい!
- 2024.03.20水滸伝