聊斎志異(りょうさいしい)、面白い話3選!
聊斎志異には、何と五百も小話があります。結構どれもこれも面白いのですが、ハッキリ言って全部読むのは至難のワザです……。
そこで、五百の中からわたくし螢火が「面白い!」と思った作品を、ここで三つご紹介します!聊斎志異の雰囲気を感じていただけたら幸いです。
首のすげ替え
これは首だけじゃなくて、他にも取り替える話。まあ、読んでね。
朱、木像と飲む
ある所に、朱(しゅ)という若者がいました。彼は大変気のよい、豪快な人物なのですが、惜しむらくはバカ。いっつも役人になるための試験に落第していました。
と、ある日彼はほろ酔いで酔っぱらい、閻魔(えんま)大王の家来の木像に向かって
「やあやあ、ごきげんよう。よかったらうちに来て飲まない?」
と、飲みのお誘い。すると翌日、何とその木像が
「よう!飲みに来たぜ!君、いい奴だな!」
と、やって来たのです!木像は「オレ、陸(りく)っていうんだ。仲良くしよーぜ」と自己紹介。朱は驚くどころか喜んで
「いいよ。さあ、飲もうぜ!」
と、どんちゃん騒ぎ。すっかり仲良しになって、そのままグーグー寝ちゃったのでした。
陸、朱の心をすげ替える
さて、目が覚めると……何と!陸が朱の腹をぱっくり開けて、中から腸とか胃袋を取り出してるじゃありませんか!
「ヒャー!何すんだ!」
と尋ねると、
「うん、君がバカなのは、君の心がキレイじゃないからさ。今、キレイな心と取りかえてあげるからね」
と、新しい心を入れて、腸や胃袋を元に戻すと、チクチク縫って手術は終わったのでした。さすがは閻魔様の家来、痛くないし、血の一滴も出てません。
さらに驚くべきことに、この後、朱のバカはすっかり治って、大出世してお金持ちになったのです。
朱、奥さんの首を取りかえてもらう
お金持ちになった朱、その後もずっと仲良しの陸に、ある日こんな相談をします。
「うちの奥さんは、下半身はとってもいいんですがね、どうも顔がまずいんだな。取りかえることってできる?」
「簡単さ。じゃあ、やってあげよう」
陸はさっそく奥さんの寝室へ。スヤスヤ寝てる奥さんの首をスパッと切ると、美人の首をピタッとつけ、真っ直ぐになってるか確認すると、こないだみたいにチクチク縫って終わらせました。
起きた奥さん、自分の顔を鏡で見てビックリ。
「まあ!わたしの顔じゃないわ!」
でもスーパー美人になったから文句は言いません。
その後も、朱と陸は仲良しを続け、死んだ後も幽霊になって飲み会をして、幸せに過ごしましたとさ。
水莽草(すいぼうそう)
これは幽霊の話だよ。でも全然怖くないから安心してね。
いきなり殺された祝(しゅく)
祝という若者がいました。年取った母親と、一歳の息子と三人暮らし。奥さんは早死にしちゃっていません。
さて、この祝がぶらぶら散歩していた時、のどが渇いたので茶店に行きました。出てきたのは干からびたバーさんで、持ってきたお茶も、ヤな匂いがする代物。ぜんぜん飲む気がしません。
「こんなもん飲めるか」
と文句を言って店を出ようとすると、店の奥から大変な美女が……。シナシナと近づいてきて、お茶を勧めるじゃありませんか。すっかりメロメロになった祝は、勧められるままにお茶を飲み干し、さらにおかわりまでしちゃったのでした。
ところが!実は、このバーさんと美女、幽霊だったのです!この土地の言い伝えで、「水莽草という毒草を食った人は、水莽鬼という幽霊になってしまう。同じく水莽草を食って死んだ人がいないと、あの世に行けない」と言われているのです。だからこの女とバーさんは、祝をハメて水莽草のお茶を飲ませ、めでたくあの世に行こうとしていたのでした!
簡単にハメられた祝、家につくなりぶっ倒れ、そのまま死んじゃいました。美人って怖いですね。
死んだのに帰ってきた祝
祝のお母さんは当然大泣き。わずか一歳の孫と、年取った自分だけ。どうすればいいか分かりません。
が、そんなある日。いきなりドアを開けて
「お母さん。ただいまー」と、祝が帰ってきたのです!しかも後ろに美人の女を連れていて、「お母さん、心配だから帰ってきたよ。この女は僕の新しい奥さん。水莽草で僕を殺した美人なんだけど、『殺した責任を取って結婚しろ』って説得して連れてきたんだ」
……とのこと。お母さん、正直ドン引き。でも、年寄りだけで暮らせるはずもないので、幽霊息子と幽霊奥さんと一緒に暮らすことに……。
しかもそのうち、幽霊奥さんの元の両親がやって来て、
「まあ!この子はうちの早死にした娘です!こんなところで幽霊になって、しかも結婚していたなんて!」
と号泣。祝の家がビンボーなのを見かねて、「娘が幽霊になってまで苦労するのは見てらんないわ」と、たんまりお金や肉をくれて、しかも大きな家まで建ててくれたのです。
こうして、幽霊一家はとっても幸せな(?)第二の人生を送ることになったのでした。
死後出世した祝
そうこうしてるうちに、祝のお母さんは死亡。その後も祝と奥さんは家を守って、息子が年頃になったらいい嫁さんをもらってやりました。
そんなある日、天帝(天上界の皇帝)から、「お前は見どころがあるから、天上界の役人にしてやるよ」とスカウト。祝は奥さんと一緒に天上界に行きましたとさ。
酒飲み仲間
これは単なるお友達の話じゃありませんよ。「こんな友達がいたらいいなあ」と思わずにいられません。
呑み助の車(しゃ)
車というビンボーな男がいました。ビンボーなくせに大酒飲み。夜は徳利の行列を作らなくちゃ眠れない、という厄介な奴でした。
ある日、大酒飲んで寝台に横になると、なんだか隣に温かいものが……。誰かとなりで眠っている様子です。「はて……」と触ってみると、毛がフサフサ。猫にしちゃ大きい。灯で見ると、狐がグーグー寝ているのでした。しかも、テーブルの徳利は全部カラ。ぐでんぐでんに酔っぱらってるのです。
車はスッカリうれしくなって、「こいつはわたしの飲み友達だ」と、起こさずに布団をかけて、一緒に寝ました。
すると深夜――。狐が儒学者に化けて
「殺さずにいてくれてありがとうございました」
と平身低頭。車はニコニコして
「いいのさ。よかったらいつでもおいで。酒をご馳走してあげるよ。いい飲み友達になろうじゃないか」
こうして、車と狐は毎晩仲良く飲みかわす仲になったのです。
狐の恩返し
いい友達になった狐ですが、ある晩車に向かって
「いつもお酒をご馳走になってますが、あなた貧乏でしょう。酒代だって馬鹿にならないんじゃありませんか」
「別にどうってことないさ。気にするなよ」
「そんなわけにいきませんよ。一つ、わたしが酒代を工面してあげましょう。明日の朝、ここから東南七里の道端に二両落ちてるから拾いに行きなさい」
果たして、探しに行くとお金が落ちてます。また、さらに次の日。
「中庭の裏に穴倉があります。中にお宝がありますよ」
探しに行くと、何と一万両が……。そしてまたある日、
「市場でソバの種をたくさん買いなさい」
すると、しばらくして干ばつになり、米や豆はみんな枯れてしまい、ソバしか植えられなくなりました。ソバの種をたくさん持っている車は大金持ちになったのです。
こんな感じで、車は狐のおかげで何もかもうまくいきました。家族も狐を大事にして、みんなで幸せに……。でも、車が年取って死んでしまうと、それっきり狐は姿を消してしまったそうです。酒がつなぐ縁って素晴らしいですね。
聊斎志異読むなら
この作品読むのにおススメの本、三冊紹介します!
マンガの聊斎志異(をもとにした作品)
「諸怪志異」
全三巻です。タイトルからして聊斎志異っぽいでしょ。聊斎志異をもとにして、いろいろ化け物が出てくる短編を集めた奴です。だから聊斎志異そのままってわけじゃないのですが……雰囲気がものすごくいいです。中国の古典をここまで再現した漫画は、多分他にないでしょう。
変態レベル聊斎志異
「聊斎志異」
完訳です。上下巻あります。
聊斎志異はいろんな訳が出てますが、これが一番いいかな?わたしは中学の時にこれにホレて読みました。ですが!ぶっちゃけて言うと、豪華本なので持ち運びは不便ですよ。変態さんはこれを買いましょう。本棚にこれがあると「おお!読書家!」って感じでカッコいいです。
文庫が好きな方はコレをどうぞ↓
なんだかんだ言って、岩波はハズレがないですよ。
まとめ
わたしが贔屓にしている三つのお話を紹介しました。三つの内、二つが飲みまくっている話で申し訳ない……。
でも、これはわたしのせいじゃなく、酒の話が多すぎるせいです!聊斎志異にしろ、三国志にしろ、水滸伝にしろ、中国人は飲みすぎです!決して、わたしが酒好きだから、こんなのばっかり選んでるんじゃありませんよ!
さて、言い訳はこれくらいにして……聊斎志異はこの、三つの話のように、意外とハッピーエンドが多いです。どうやら、不思議なことが起こっても、驚かずにニコニコ受け止める人は、幸せになれるということらしいですね。
著者プロフィール
最新の投稿
- 2024.10.02平安貴族の日記に残る天体現象!彗星、超新星、オーロラまで!
- 2024.09.24保元平治物語に登場する刀剣をまとめてみた!
- 2024.03.20水滸伝のあらすじまとめ。どこよりも分かりやすい!
- 2024.03.20水滸伝