西遊記の三蔵法師って実は情けない!トホホなキャラを五分で解説
ご存知、三蔵法師。この人、西遊記の中では実在の人で、超が9つ付くくらい大偉人!
さぞかし、西遊記の中でもありがたいお人柄で、まるで仏様みたいなお方であろう……と思ってしまいますが……そう思って読んでしまうとガッカリします!何このキャラ!何でこんな奴に孫悟空や八戒や沙悟浄が従ってるの?!ってムカつくくらい情けないキャラです!おそらく、中国四大奇書の中でぶっちぎり一位のトホホなキャラかと。
このページでは、西遊記の三蔵法師のキャラクター像を(ホントは偉い人なんですよ?)、日本一分かりやすく説明します!
実は実在の人、三蔵法師
西遊記は言わずと知れた大ファンタジー作品。主役の孫悟空は猿だし、八戒はブタ。キャラクターの九割がたは妖怪で、残りの一割もほとんど仏さんとか観音様とか天上界のいろんな奴……。
その中で国宝級に貴重な人間キャラ、三蔵法師。この人は人間ってだけで貴重ですが、さらに貴重なことには、この人、ホントにいた人です。まずは、この人の史実のキャラを紹介します。
ホントの名前は玄奘(げんじょう)法師。……たぶん、この「奘」の字は、日本に生きてる限り、こいつの名前以外で使うことはないでしょう。よく知られた「三蔵法師」の名前は、インドから中国へ経巻を持って帰ってから、皇帝にもらった名前なのです。「経蔵・律蔵・論蔵の三つの極意を極めた高僧」という意味の名前です。
さて、この玄奘さん。わかくしてミラクルな頭脳の持ち主。頭良すぎて中国の仏教の教科書を全部マスター。
「中国の仏教は教科書が足りな過ぎて駄目だ!天竺(インド)に行って、原本を調べてくる!」
と、すごい誓いを立てます。
でも時期が悪い。当時の中国は国内がばらばらになって戦争しまくり、ようやく「唐」という国が天下統一を果たしたばっかり。「中国の国民は、勝手に海外に行っちゃダメ」という決まりが出ていたのです。当然、玄奘さんも「インドに行きたい!」と言っても「ダメです」と即却下。
ところが玄奘は諦めません!この人、実に鋼の信念の持ち主。「じゃあ勝手に行くぜ」と、国法を無視してインドに旅立ったのでした!当時のことですから全部徒歩。行って帰るまで、何と17年という大旅行。持ち帰った経巻は657部もありました。
この時の皇帝は、唐で一番名君と言われた太宗李世民(たいそうりせいみん)。この人もさりげに西遊記に出てます。三蔵法師と同じく、実在の人ですよ。この太宗は国禁を破ってインドに行ってきた玄奘法師を、まったく罪に問わず、最高の礼を尽くしてもてなすというイキな計らい。三蔵法師の名前を与えたのも、この皇帝なんです。う~ん、玄奘もすごい人ですが、太宗もカッコいい皇帝ですね。
玄奘は帰国後、自分がインドまで行って帰るまでの旅を「大唐西域記」という本に書き記しました。西遊記は、この「大唐西域記」を元にして書かれたものなんですよ。
どうです?史実の三蔵法師って偉い人でしょ?
三蔵は、そもそも何で天竺に行くことになったの?
ここからはお待ちかね、西遊記の三蔵法師の紹介です。
さて、ある時お釈迦様が弟子たちとこんな会議を開きます。
「世界には四つの州があるが、このうち、東の州だけが争いが絶えず平和でない。そのために、わたしのもっている超レア本、三蔵真教を伝える必要があるのじゃ。お前たち、東の州の中で真教をゲットしに行く人間を探してもらいたい」
つまりですね、仏様が東の州に「これ勉強しなさい」と言って、レア本の経巻をプレゼントしたって、簡単に手に入っちゃありがたみがない。なので、勇気ある人間に「さあ、取りに行くんだ!」と使命を与え、わざわざ遠くの天竺まで歩いて行かせよう、とそういうわけです。
さて、お釈迦様の命令で観音様が「勇気ある人間」を探しまくります。それで、白羽の矢が立ったのが三蔵法師なのでした。
ある時、皇帝が開いてる大法会でお説教してる三蔵法師(この時は玄奘法師)。三蔵がペラペラとしゃべっていると、乞食坊主に化けた観音様が
「あんたの説教してるのは小乗仏教だろう。大乗仏教の教えを言ってみろ」
これを聞いた三蔵、ぱっと台から降りて手をついて
「恐れ入りました!大乗仏教については知りません」
観音様は勝手に台に上がって、皇帝に向かって
「小乗仏教の教えでは、世の中平和にならないんです。西方天竺国のお釈迦様のところにあるお経を取って来なきゃダメです!」
と大演説。いきなり観音様の姿に戻り、雲に乗ってピューッと飛び去ってしまったのでした。
このスーパー奇跡を目の当たりにした三蔵、皇帝と約束します。
「わたしが天竺に行って、経巻をゲットしてきます!覚悟はできてますよ!」
こうして、三蔵ははるかな旅路についたのでした。ここでは、三蔵法師フツーにエライ坊さんですよね。ですが、旅が始まったとたんになぜかキャラが一転。超情けなくなるのでお楽しみに。
悟空に泣きついてばっかりの三蔵法師
さて、三蔵法師はいざ旅に出ますが、「覚悟はできてます」とかたんかを切ってたくせに、まるっきりヘタレです。
最初に人間の弟子が二人ついてたんですが、ある時魔物に襲われて、この二人の弟子が目の前で食べられちゃっても見てるだけ。ぶるぶる震えて助けようともしません。
その後、三蔵法師も大虎に襲われて絶体絶命!
「もうダメだ~。食べられるのを待つしかない」
とバッタリ地面に倒れて南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……。運のいいことに、この時は猟師が助けてくれました。でも、この猟師が途中までついて行ってくれて、
「じゃあ、俺はここで帰りますよ。道中気を付けて」
と言って別れようとすると、パニックに陥って大騒ぎ。
「ここでそなたと別れたら、どうやって先に進めばいいのか」
とワアワア泣いて、袖にすがるやら、手を合わせるやら……この人ほんとに偉人なの?って感じです。
まあ、偶然この山には孫悟空がお釈迦様に閉じこめられてて、この孫悟空が三蔵法師の弟子になり、その後ボディーガードになったので、猟師はめでたく解放されたのでした。
この後、三蔵法師は何かというと悟空に泣きつき、「助けて~」と悲鳴を上げまくり。先ほどの猟師に取りすがったみたいに、三蔵法師はピンチになるとすぐにワンワン泣きます。ここまで涙腺弱い坊さんも珍しいです。
西遊記の物語は、ほぼ百パーセントこのパターン。
三蔵法師、妖怪に狙われる⇒三蔵法師大泣き⇒悟空が暴れて三蔵法師を救う
を繰り返しているのです。
悟空をいたぶる三蔵法師
孫悟空に助けてもらってばっかりいる三蔵法師なのですが、そのくせ三蔵法師はしょっちゅう悟空を拷問します。
この元凶は、そもそも観音様のせい……。
ある時、盗賊共に襲われた三蔵法師と悟空。悟空はすぐさま盗賊共を全滅させます。が、これに三蔵法師が文句。
「なにも殺さなくたって。追い払えばいいだけじゃないか」
悟空はムッとして「そんなことでは反対にお師匠様が殺されますよ」
言い争いになって、悟空は腹を立てて逃げちゃいました。三蔵法師は一人になってしおれてましたが、そこへ観音様が出てきてアドバイス。
「悟空が帰ってきたら、この帽子を被せなさい。そこで呪文を唱えれば、悟空はおとなしくなりますよ」
やがて悟空が帰って来て、三蔵法師は帽子を差し出します。
「この帽子を被れば、お経が読めるようになるんだよ」
坊主のくせに大ウソついた三蔵法師。スッカリ騙された悟空が帽子をかぶると、観音様に教えられた呪文をムニャムニャ……。
とたん、悟空は「痛い痛い!」と七転八倒。帽子にくっついていた金の輪が、頭にがっちり食い込んで、ギリギリと頭を締め上げるのです!
これが有名な「孫悟空の輪」三蔵法師はこれ以後、悟空がちょっとでも逆らうと呪文を唱え、悟空を拷問しまくるのです。しかも「呪文を三十回唱えるぞ」とか脅しまくり、悟空をビビらせる三蔵法師……。しょっちゅう助けてもらってるくせに、いいのでしょうか……。
騙されすぎ!三蔵法師
三蔵法師は旅の途中、数えきれないくらい騙されます。妖怪の罠はもちろんのこと、弟子の八戒にまで……。
例えば「白骨夫人」という話がありますが、この中で三蔵法師は八戒に三回も騙されてます。
「坊主を食えば長生きできる。女に化けて坊主に近づこう」
と、とき(坊さんにあげる施し)を持ってやってきた妖怪。でも、すぐに悟空は「これは妖怪だ!」と気づいて、何も言わず棒でバシッ。妖怪はすんでのところで、ニセモノノ死骸を置いてスタコラ逃げます。
これを見た八戒、こいつは結構ずるいので、悟空をハメてやろうと
「お師匠様、兄貴(悟空)は女を殺した罰で呪文を唱えられる(頭を締め上げる呪文)のが怖いので、この女が妖怪だと嘘をついてるに違いありません」
と、まことしやかに大ウソ。……三蔵はコロッと騙されます。騙されたばかりか、「罰当たりな奴め」と呪文をムニャムニャ。
「ヒーッ、痛い痛い!助けて~!」
悟空は金の輪で締め上げられて七転八倒。
さて!この妖怪は、一回の失敗じゃ諦めません。
妖怪が来る⇒悟空が見破って殴る⇒妖怪逃げる⇒八戒嘘をつく⇒三蔵騙されて呪文
これを、この後二回も繰り返します!可哀想なのは、呪文を唱えられまくられた悟空。三蔵のために働いてるのに、悟空は金の輪で締め付けられすぎてしまい、哀れにも頭がヒョウタンみたいに凹む有様……。
それにしても、三蔵法師、騙されすぎです!ちっとも悪くないのに拷問にあい続ける悟空、お疲れ様です……。
三蔵、なんと虎になったことがある
ある時、例によって妖怪にさらわれて食われそうになった三蔵法師。でも、その妖怪の奥さん(人間の美女)が助けてくれます。
三蔵、泣きの涙で逃げ出し、隣の国まで逃げたのですが……しつこい妖怪はここまで追ってきます!妖怪は美男子に化けて、その国の王様に
「これは唐僧に化けた虎です。わたしが今、正体を見せてあげましょう」
呪文を唱えると、三蔵はあっという間に大きな虎の姿に!驚いた王様、家来たちに命じて三蔵虎を檻に入れてしまいました。
三蔵虎は檻の中でシクシク……。三蔵って、さらわれたり閉じ込められたりすると、いっつもこうやって泣いてるだけです。自力救済は一切しません!
この間、弟子たちは大忙し。悟空、八戒、沙悟浄、その上、いつも三蔵の乗ってる馬まで奮戦して、ようやく三蔵を救ったのでした。
これは衝撃!三蔵、子供を産みそうになる
三蔵法師は妖怪にさらわれるわ、騙されて詐欺にあうわ、まあとにかくトラブルメーカーなのですが、極めつけは「子供を産みそうになったことがある」です!
ある時、綺麗な水が流れてる川についた一行。三蔵と八戒はこの水をグビグビ。と!見る間に二人は腹がせりだしてきて、しかも中で肉の塊が動き出すというトンデモナイ事態に!
ヒイヒイ言いながら、悟空と沙悟浄に助けられて、近くの居酒屋に駆け込んだ二人。するとそれを見た居酒屋のバーさんは
「ええ!あの水を飲んだんですか!ここは女しかいない国で、あの川は子母河です。あの川の水を飲むとたちまち妊娠して子供を産むんですよ。ここの女たちは、いつもあの水を飲んで子供を産むのです」
と衝撃の事実を説明。……聞いた三蔵は真っ青。
「わ~!誰か医者を呼んでくれ~」
パニック状態でワンワン泣き出す始末。八戒もピーピー泣いて「死にたくないよ~」と大騒ぎ。二人して「堕胎薬をくれ!」とトンデモ発言まで……。
さすがの悟空もこれにはオロオロ。「お師匠様が子供を産んでは大変だ」と、あっちへ行ったりこっちへ行ったり……。
まあ、最終的には悟空と沙悟浄が落胎泉という子供をおろす魔法の泉へ飛んでいき、そこにいた妖怪をブチ切れした悟空が撃破。水を強奪した沙悟浄が三蔵と八戒の元へ駆けつけて助けたのでした!
まとめ。三蔵法師の性格って?
とにかく情けない人。いっつも泣いてる。しょっちゅうパニック。すぐさらわれる。騙されすぎ。気が弱くてめそめそ。口癖は「悟空よ助けてくれ!」ですかね?
でも、ちゃんと最後まで天竺に行ったんですから、実はエライ人?
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