曽我兄弟のあらすじ、講談調に究極圧縮!

2023年4月23日

「弟、あれ見よ。空ゆく雁(かり)も、親子揃うて飛ぶものを。そなたは弟、我は兄、されど父は真の父ならず。赤澤山の秋の暮れ、刺客が放つ毒矢のために、無念や父は討たれたり」

「兄者よ、我ら大人になったらば、必ず工藤の首討たん。我ら死ぬまで離れまい。生きるも死ぬも一所にて」

一念ここに及びては、よし泰山(たいざん)の崩るとも、いかで決意を変えるべき。雪なお白し富士の裾、駒(こま)に鞭打つ大巻き狩り。共に松明打ち捨てて、名乗りを上げる曽我兄弟。

「起きよ、祐経(すけつね)父の仇。曽我の兄弟ここに推参(すいさん)!」

閃(ひらめ)く稲妻、斜めの豪雨ものともせずに、本望遂げれば花と散る。若き血潮の緋縅(ひおどし)に、波打つ音を聞けや君!

いちおう現代文でも説明しとく!

こんにちは、坂口です!

このたび「曽我兄弟のあらすじを、どこまで究極に圧縮できるか!」にチャレンジしてみました。(究極すぎて分かりづらかったらすいません)

講談調にしたのは、タダの趣味です。わたしは古典の内容を現代文で書くのって、なんかイヤなんですよ。どうもムードに欠けるっていいますか、つまんない教科書を思い出してロマンが台無しになるっていいますか……。

さて本題、曽我兄弟のあらすじ!ホントは文庫本一冊くらいの長さがあるのですが、キーワードはこの二つ!

  1. 熱烈に仲良し兄弟!
  2. 仇討ちした!

これさえ分かってりゃOK!「曽我兄弟?知ってるよ~。仇討ちした仲良し兄弟でしょ?」って言えます!

では以下、現代文の圧縮バージョンを書いときます!

曽我兄弟ってこんな人たち!

主人公の曽我兄弟。こいつらはタダの兄弟じゃないです。なんと、「生涯一度も兄弟喧嘩をしたことがない!」という、信じられないほど熱烈な間柄。

「死ぬ時は二人だ」「来世までも共に」と毎朝、毎晩誓い合うという、完全に二人の世界。ときどき本編そっちのけで愛を語り合います!

「曽我兄弟」は本の分類としては「仇討ちもの」に入ってますが、ストーリーの主旨は、この二人のラブラブっぷりにあるといっていいでしょう。

いきなりお父さんを殺される!

曽我兄弟は鎌倉時代の人です。ちょうど源頼朝が鎌倉幕府をおっ立てた頃。

つまり、平家と源氏が日本中でバトルして、そこらじゅうで殺し合いがフツーで、とにかくヤバい時代だったってことです!

そういう時代ですから、曽我兄弟のお父さんはある日イキナリ、厄介なバトルに巻き込まれて殺されちゃいます。殺したのは工藤祐経(すけつね)。しかもこいつはドサクサに紛れて兄弟の領土を分捕り、あわれ二人は故郷を追われる身の上に……。

幼い兄弟は「いつか必ず、この恨みを晴らそう!」と、手に手を取り合って誓ったのでした。

富士の巻き狩りで仇討ちした

やがて成長した兄弟、兄は十郎弟は五郎。ついにチャンスが巡ってきます!

将軍の源頼朝が、富士の裾野で大掛かりな狩りを開くことになったのです。誰もが狩りに夢中になっている時なら、仇祐経も油断してることマチガイなし。

土砂降りの中、夜陰に紛れて兄弟は祐経の宿に忍び込みます。そして

「父の仇、観念せよ!」

と、躍りかかって本望を遂げたのです!父が殺されてから十八年、ようやく恨みを晴らしたのでした!

早死にした兄弟

ついに望みをかなえた兄弟でしたが、この直後に二人は殺されます。祐経は将軍の寵臣(ちょうしん)でしたから、こいつを殺したら必ず死罪になると、初めから分かっていたことだったのです。

が、ここで泣かせるのが兄弟の絆の深さ……!何しろ、「死ぬ時は一所に」と毎朝毎晩誓い合ってた二人。

仇を討ち果たした後、祐経の死を知って「曲者だ!」と襲い掛かってきた無数の侍たちの群れに、「二人同時に死のう」と飛び込んで行くのですが……。兄の方が先に討たれ、同時に死ねなかった弟は、狂ったように嘆き悲しむことになります。(ここがクライマックスです!)

曽我兄弟は享年、わずかに二十二と二十。武士の定めとはいえ、涙なしに語れませんね(/_;)

曽我兄弟って忘れられてる……

ところで、曽我兄弟って「鎌倉殿の13人」や「刀剣乱舞ミュージカル」で一部話題になりましたが、正直なところ、世間ではほとんど忘れられてますね。

その証拠に!本屋に行けば一目瞭然!

歴史コーナーで鎌倉時代のところを見ても、曽我兄弟の本なんて全然置いてないです!(最近、児童書なら一冊出たけど)

図書館もおんなじ!古典コーナーに小学館の「日本古典文学全集53・曾我物語」があるくらい。古本屋には大正明治に書かれた、ガチで詳しい専門書がありますが、すっっごい高くて泣けます。しかも旧字体。

嘆かわしいことです……。曽我兄弟は「日本三大仇討ちの随一」とうたわれて、昔は小学校の教科書にも載ってて、唱歌にもなってて、誰一人知らない人はなかったのですが……。

なので!このたび坂口は、曽我兄弟の本がなくって嘆いてる歴史ファンのために、曽我兄弟の入門書を製作しました!このわたしが書いたので、べらぼうに熱いです。タイトルからして熱いです。

「曽我兄弟より熱を込めて」

幻冬舎から出てます。曽我兄弟が好きな人、鎌倉に沼な人、仇討ちが趣味な人、ブラコンに萌える人、ぜひ読んでね!

↓この本の書評はこちら

曽我兄弟より熱を込めて

おまけ

↓むか~しの唱歌「曽我兄弟」はこれだい!聞いて驚け、四年生で歌う歌だぞ!

①富士の裾野すそのの 夜はふけて、
うたげのどよみ 静まりぬ。
屋形屋形の 灯は消えて、
あやめも分かぬ さつきやみ。

②「來れ、時致(ときむね)、今宵こそ、
十八年の うらみをば。」
「いでや兄上、今宵こそ、
ただ一撃(ひとうち)に 敵かたきをば。」

③共に松明たいまつ ふりかざし、
目ざす屋形に うち入れば、
かたき工藤は 酔(え)ひ臥して、
前後も知らぬ 高鼾(たかいびき)。

④「起きよ、祐経(すけつね)、父の仇あだ、
十郎五郎、 見参。」と、
枕を蹴けつて おどろかし、
起きんとするを はたと斬る。

⑤仇は報いぬ、 今はとて、
「出合へ出合へ」と 呼はれば、
折しも小雨 降りいでて、
空にも名のる ほとゝぎす。

 

 

 

 

 

著者プロフィール

坂口 螢火
坂口 螢火
歴史専門のライターを目指しています。

古典と神話が好きすぎて、ついに家が図書館のように……。

1月30日に、拙作「曽我兄弟より熱を込めて」が販売されます!立ち読みも大歓迎。ぜひ読んでね!

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Posted by 坂口 螢火