聊斎志異、超短編おすすめ5選!
聊斎志異には「エ……ッ、これだけ?」ってくらい短~いお話もたくさんあります。二百以上はある(たぶん)ので玉石混交なのですが……。このページでは、その中でも「へえっ!」ていう不思議なお話を集めました!
幽霊に噛みついたじいさん
あるじいさんがお昼寝中、いきなり幽霊女が部屋に入ってきました。
「ヤバい!」
と思いましたが、幽霊は寝ているじいさんの上にドサッと乗っかってきて、爺さんはもう逃げられません。しかも、黄色く腐敗してる顔をもろに近づけてきて、しきりに爺さんの顔をクンクン嗅ぐのです(体臭好きのヘンタイ幽霊なんですかね?)。
じいさんは心臓が止まりそうでしたが、「ここで負けちゃダメだ!」と、一世一代の勇気をふり絞ります!なんとじいさん、いきなり幽霊の顔にガブッと嚙みついたのでした!
あわてて暴れる幽霊、ガブガブするじいさん。そのうち、奥さんの声が向こうで聞こえたので、
「幽霊だ!」
と叫ぶと、幽霊はスタコラ逃げていきました。すごいぞ、じいさん!
石を食う男
王という馬飼いは仙人の修行をしていて、そのうち煮炊きしたものを食べなくなりました。それで何を食べていたかと言うと……松の実と石を食べるのです!
まるで芋でも食べるかのように石をパクパクと……。王が言うことには、太陽に向けて石を見れば、甘いか
苦いか酸っぱいか、よく分かるのだそうで。まあ、偏食の方はいらっしゃるものです。
背中の羊の毛
ある男が、前世のことをよく覚えていて、こんな話をしました。
「オレは死んだ後冥界に行ったのだが、そこでは罪を犯した人間たちが次々に動物にされていた。壁に棚があって、そこに羊や犬や豚や牛の皮が並べてある。冥界の役人たちが、その皮を持ってきて次々に人間たちにかぶせていくのだ。すると、その人間は来世でその動物になる。
オレの番になると、閻魔大王が『羊にせよ』と言った。オレはすぐに羊の皮を被せられたが、その時に一人の役人が『この男は一度、人を救ったことがあります』と言った。すると閻魔大王が、『では許してやれ』と言ったので、オレは羊の皮を脱がされることになった。
ところが、すでに羊の皮は肌にくっついてしまっていたのでなかなか剥がれない。役人たちは必死で脱がせたが、背中に手のひらサイズの毛が残ってしまった。だからオレの背中には今も羊の毛が残っている」
狐やらい
ある男が、狐に取り付かれて(つまり、美女といい仲になったと思ったら、その美女の正体は狐。男は精気を吸い取られて病気になるということ)、すっかり痩せ衰えてしまいました。ヤバいと思って田舎に引っ込んでも、狐はまだしつこく付きまとってきます。
そこで、医者にヘルプを頼んだところ、医者は男に薬をくれました。……この薬、何の薬かと言うと、すごい効き目の精力剤だったのです!
その晩、相手が狐だろうが何だろうが、ヤル気満々になった男。狐女がやって来ると、死ぬほどの勢いで攻め立てまりました。狐は泣いて「やめてほしい」と哀願。でも男は馬耳東風。ますます激しさを増してヤリまくり。
狐はのたうちまくって苦しみましたが、どうしても逃げられない。男が気付いたら、ベッドの上でポックリ死んでしまっていましたとさ。
冥途から逃げて来た男
耿(こう)という男が、病気で危篤になりました。
「もう死ぬかもしれない。わたしが死んだら、お前はどうするかね」
と奥さんに聞いたところ、奥さんは馬鹿正直に
「貧乏だし、再婚するわ」
とのこと。耿は大激怒して「人でなしめ!」と叫んでショック死。
……これだけだったら別に何てことないんですが、この男、自分で死んだことを知りませんでした。魂だけになった耿は、家の門を出たところで「早く乗んなよ~」と、大勢が乗ってる車に乗せられます。車には、自分の名前が書いてある紙が貼ってありました。
「変だなあ~?」と思いつつ、車に揺られていると、車に乗ってる人たちは「ここは思郷というところだね」とかいろいろと、冥途の場所の名前を言うではありませんか!
「ヤバい!オレは死んでるらしい!」と気づいた耿。女房は再婚するというし、家には年取った母親がいます。女房が家を出て行ったら、母親は養ってくれる人がいなくて餓死しちゃうかも……。
「駄目だあ!オレは死ねない!」
一大決心した耿。車に書いてあった自分の名前をはぎ取り、そのまま後ろに向かって爆走。そのまま家の中の自分の死骸に大ジャンプ。
こうして、耿は生き返ったのでした。生き返ったとたん、「水!喉が渇いた!」と水をがぶ飲み。そんでもって、奥さんのことは大っ嫌いになって、二度と枕を共にしませんでした。
鬼の目玉
ある役人が子供の頃の話。彼は大変なガキ大将で、いたずらばっかりしていました。
ある時、このガキは従兄弟と一緒に祠(ほこら)で遊んでました。ふと見ると、鬼の木像の顔に綺麗なガラスの目玉がはめ込んであります。
「あ!あれほしい!」
と思ったクソガキ、何と鬼の目玉をくりぬいてパクってしまったのです!
このクソガキ、そのまま目玉を風呂頃に入れて従兄弟と帰宅したのですが……そのとたん!いきなり従兄弟がバッタリ倒れ、家族が慌てて介抱するも、口もききません。「一体何事!」とみんなアワアワしてたのですが、しばらくすると従兄弟はむくっと起き上がって
「何でわしの目玉をえぐり取ったのだ!返せ!」
とわめきだします。みんなは訳が分からず「何だ何だ」とパニックでしたが、クソガキは「アッ……もしかして」と、おそるおそる悪事を告白。
家族はそれを聞いて、「子供のしたことですから許してください!すぐに返しにまいりますから」
と平謝り。すると従兄弟は「なら、わしは帰るぞ」と大声で言って、またバッタリ。しばらくすると息を吹き返しましたが、自分が言ったりやったりしたことは何も覚えてなかったそうです。
もちろん、目玉はちゃんと返却しましたとさ。
夢の別れ
この話は、聊斎志異(りょうさいしい)の作者、蒲松齢(ほしょうれい)のじーさんの弟の話です。う~ん、何気に遠縁ですね。
じーさんの弟の名前は玉田(ぎょくでん)といって、親友に李(り)さんという人がいました。ある晩のこと、李さんがグーグー寝ていると、その夢の中に玉田が現れて
「僕は長いこと留守になるから、お別れに来たんだ」
と言います。「どこへ行くんだ」と尋ねると、「遠くへ」と言って、家を出て行きました。ついて行くと、ある谷間までやって来て、岩壁に近寄っていきました。その岩壁には裂け目があって、玉田は背中をその裂け目に向け、ゆっくりと後ずさりしてその中へ吸い込まれるようにして入って行ってしまいました。
李さんは何度も呼びましたが、返事はなく、驚いて目を覚ましたのです。
夜が明けると、李さんの父親が「弔問へ行くぞ。玉田が死んだのだ」と言うではありませんか。
「ああ、親友は霊となって、わたしに最期の別れに来たのか」
と思い、涙を禁じ得なかったそうです。
著者プロフィール
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